ウクライナ穀物盗難の疑いが、今度はイスラエルとの外交危機に火をつけた。今年だけで4隻。ロシアが占領地から持ち出したとされる穀物を積んだ船が、イスラエル・ハイファ港に次々と荷下ろししていたとイスラエル紙ハアレツが報じたのだ。
ゼレンスキーが「5隻目」を暴露――ハイファ港で何が起きていたか
ゼレンスキー大統領は月曜日、「ロシアに盗まれた穀物を積んだ別の船が、今まさにハイファ湾で荷下ろしを待っている」と自ら明かした。しかも「イスラエル当局は積み荷の中身を知らないはずがない」と踏み込んで非難している。
これを受け、ウクライナのシビハ外相は駐キーウのイスラエル大使を召還。声明ではイスラエル側の「適切な対応の欠如」を問題視したとされる。単なる抗議レターのレベルを超えた動きで、二国間関係はかなりきな臭くなってきた。
「イスラエル当局は自国の港に到着する船の積み荷を知らないはずがない」――ゼレンスキー大統領(BBC報道より)
一方、イスラエルのサール外相は「ツイッター外交だ」と一蹴。証拠なき主張だと反論した。ロシアのペスコフ報道官は「この件にはコメントしたくない」と口を閉じている。
制裁をすり抜ける穀物ルート――第三国が担う役割
ここで引っかかるのは、ロシアによる農産物の横流しがなぜこれほど長続きしているかだ。占領地ウクライナから穀物を持ち出し、船籍や積み替え港を経由して第三国に届けるルートは、既存の制裁網では捕捉しにくい。イスラエルはロシア制裁に正式に参加していない立場で、法的にグレーな部分がある。
ウクライナ穀物盗難をめぐっては以前から国連や欧米諸国が懸念を示してきたが、今回の報道はハイファ港という具体的な地名と「今年4隻」という数字を伴っている。それが一気に外交案件へと格上げされた格好だ。ロシア・ハイファ港の組み合わせがここまで表に出てきたのは珍しい。
ゼレンスキーがわざわざ公の場で5隻目の存在を明かしたのは、イスラエルに黙認をやめさせる圧力をかけるためだろうとみられている。ただ、イスラエルとしてはガザ問題を抱えながらロシアとの関係も手放したくない、という綱渡りが続いている状況でもある。
この先どうなる
最大の焦点は、イスラエルが今後ハイファ港への入港を実際に制限するかどうかだ。外交的抗議だけで終われば、ウクライナとの関係悪化は続く可能性が高い。ゼレンスキーはすでに「二国間関係を損なう」と警告しており、次の手として欧米への働きかけを強める展開もありえる。ロシア側はコメント拒否を貫いており、今のところ火に油を注ぐつもりはなさそうだ。ただ、積み荷の証拠が国際的に固まってくれば、イスラエルはもう少し難しい立場に置かれることになる。「証拠がない」という反論がいつまで通用するか、そこが当面の分岐点になりそうだ。