イラン核開発が「兵器化まで数週間以内」という水準に達しているとの推定が出たタイミングで、意外な人物が武力行使の容認論を口にした。強硬派の政治家ではなく、元英国通商官というキャリアを持つ学者からだった。
エド・プライスが語った「それでも武力を支持する論拠」
ニューヨーク大学上席研究員のエド・プライスは、ブルームバーグのインタビューに対してこう述べた。
「米国がイランとの混乱した戦争(hot mess of war)に直面している今もなお、核兵器保有を阻止するための武力行使を支持する説得力ある論拠がある」
プライスはもともと貿易・外交畑の人物で、タカ派の論客というわけではない。その人物が「武力容認」を公言したことで、発言の重みが増している。外交的解決を模索する側の人間が「それでも」と言い始めたとき、交渉テーブルが残り少なくなっていると読んだ方がいいらしい。
ホルムズ海峡20%、核ドミノ——数字で見えてくるリスク
なぜ今この話が急浮上しているのか。背景にある数字が鮮烈で、世界の原油海上輸送量のおよそ20%がホルムズ海峡を通過している。イランが核を持てば、この航路を人質にした交渉力が別次元に跳ね上がる。原油市場だけでなく、地域の安全保障計算そのものが書き換わりかねない。
さらに核兵器阻止に失敗した場合のシナリオとして、サウジアラビアやトルコが独自の核開発に動く「核ドミノ」が語られている。中東で一国が核を持てば、隣国が黙っている保証はないという話で、これが実際に動き出すと非核化の議論は別の次元に飛んでしまう。
イランの核開発能力が「数週間以内で兵器化可能」とされる段階に来ているとすれば、外交的な窓は事実上、指の間から砂が抜けていくような状態とも言える。
この先どうなる
今後の焦点は、米国がイランとの「混乱した戦争」を続けながら、核施設への軍事オプションをいつ、どの形で現実の選択肢として示すかにある。プライスのような外交実務家が公然と武力容認論を述べた事実は、少なくとも「対話だけで解決できる」という前提が揺らいでいるサインとして受け取れる。ホルムズ海峡の緊張と核開発の進捗が重なれば、次の動きは速いかもしれない。