イラン和平交渉の次の一手を、世界の原油市場がじっと待っている。交渉が進むか、壊れるか――その答えひとつで、給油所の価格が数十円単位で変わりかねない局面に入った。
ライト長官が「絶対にない」と言い切ったこと
4月29日、米エネルギー長官クリス・ライトはBloombergの取材にこう答えた。
「エネルギー輸出禁止の検討は絶対にない」
原油価格高騰への対応策として輸出制限が浮上しているという観測を、長官はきっぱり退けた。あわせてイランの石油備蓄能力にも言及し、トランプ政権が交渉においてエネルギー供給を政治カードとして使う姿勢を維持していることをにおわせた。市場が読み取ったのは「制裁は当面続く」という現実だったらしい。
交渉が妥結した場合と決裂した場合、価格はどちらに動くか
シナリオは二択に絞られてきた。
まず和平が前進した場合。イランへの制裁が段階的に解除されれば、現在市場から締め出されているイラン産原油が戻ってくる。推定では日量数百万バレル規模の供給増になりうる。その瞬間、価格は急落する可能性が高い。逆に交渉が決裂した場合、ホルムズ海峡周辺の軍事的緊張が一気に再燃する。世界の原油輸送量の約2割が通過するこの海峡が不安定化すれば、価格への上昇圧力は今より格段に強くなる。つまり市場は今、どちらに転んでも「静かな現状」が壊れるタイミングを待っているような状態だ。
ライトエネルギー長官の発言が市場に響いたのも、こうした文脈があるから。輸出禁止否定=供給制限しないという姿勢は、少なくとも米国サイドからの価格抑制策がないことを意味する。原油価格高騰の圧力は、あとは交渉テーブルの結果次第という構図になった。
この先どうなる
直近の焦点は、米国とイランの次回接触のタイミングと、その場でどんな提案が出るかだろう。イラン側は制裁の段階的解除を求め、米国側はイランの核開発制限を条件に据えている。この溝が埋まらない間は、原油価格は高値圏に張り付いたまま推移する公算が大きい。イラン和平交渉が「和平」で終わるか「交渉決裂」で終わるかによって、エネルギーコストという形で家計にも影響が出てくる。世界のガソリン価格は今、外交官の言葉ひとつに連動している。