フリードリヒ・メルツの名前が、突然アメリカ発の泥弾を浴びた。トランプ前大統領がTruth Socialに短く投じた一文——「メルツはイランが核兵器を持つことを認めている。そう思っている」——が、大西洋を越えて欧州を揺らしている。メルツ側はこれを否定する公式発言を出しておらず、投稿の根拠も不明のままだ。

根拠なき断罪——トランプ投稿の中身

問題の投稿はこうだった。

「ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は、イランが核兵器を保有することを認めている。そう思っている。」

言い切りではなく「そう思っている」と添えているあたり、証拠を示す気はないらしい。それでも、この一文がもたらすダメージは相当なものだった。イラン核開発をめぐる外交交渉が続く中、欧米の結束を誇示すべき局面で、最大の同盟国の首脳を名指しで敵視した格好になる。

メルツ政権はこれまでイランの核兵器開発に反対する立場を堅持してきた。英仏独はイラン核合意(JCPOA)の枠組み維持にも関与してきた経緯がある。「容認」という言葉とは、真逆のポジションといっていい。

NATO内に走った亀裂——同盟の言葉が崩れるとき

今回引っかかったのは、攻撃の内容よりも「タイミング」だった。イラン核交渉が膠着し、アメリカが独自の圧力路線を強める場面で、欧州の主要国リーダーが「核容認派」のレッテルを貼られた。これが国際社会にどう映るかは、想像に難くない。

NATOは元々、加盟国が共通の脅威認識を持つことで機能する枠組みだ。その内側から「ドイツはイランの核を認めている」という言説が飛び出せば、イラン側への外交圧力は分散する。意図的かどうかはわからないが、結果としてそういう効果を生む投稿だった。

トランプ氏はさらに「同盟の崩壊は、多くの場合、外敵ではなく内部の言葉から始まる」とも記している。この一文が警告なのか、それとも自らその引き金を引いているのか——読む者によって受け取り方が変わってくる。

この先どうなる

メルツ政権が正式に反論に動くかどうかが、まず最初の焦点になりそうだ。沈黙すれば「否定しなかった」と読まれるリスクがあり、強く反論すれば米独関係の摩擦がさらに表面化する。どちらに転んでも、トランプ側にとって悪い展開にはなりにくい構図になっている。

イラン核交渉の行方という観点では、欧米が一枚岩で圧力をかけるシナリオが揺らぐことになる。米欧の足並みの乱れをテヘランが利用する可能性も、否定はできない。次の動きはメルツ側の公式声明か、あるいはトランプ側からのさらなる投稿か——しばらく目が離せない。