ホルムズ海峡封鎖が現実になれば、原油価格は「時間単位」で動く――そう言われてきた海峡をめぐり、イラン自身が「崩壊状態」を認めたとトランプ前大統領が公表した。5月2025年のことだ。Truth Socialへの投稿は短かったが、その一言が持つ意味は小さくなかった。

イラン経済崩壊、数字が示す限界点

イランのインフレ率は直近で年率40%超を推移しており、通貨リアルは対ドルで過去5年で約8割近く下落した。原油輸出は制裁によって大幅に抑制され、財政赤字は拡大の一途をたどっている。革命防衛隊が外貨獲得のために貨物船の拿捕を繰り返していた背景にも、この資金難があったとみられている。

複数の経済指標を並べると、「崩壊状態」という言葉がオーバーではないとも読める。ただし、これが交渉テーブルに着くための演出なのか、本当に退路を失った末の発信なのかは、今の段階では断言できない。

「イランは今、自分たちが『崩壊状態』にあると我々に伝えてきた。彼らは我々に『ホルムズ海峡を開放してほしい』と求めている」――Donald J. Trump(Truth Social)

トランプ氏がこの投稿を選んだタイミングも興味深い。核合意をめぐる間接協議が断続的に続く中、米側が優位な交渉材料を手にしたと内外に示す効果がある。イランを「懇願する側」として描写することで、次の一手の選択肢を広げているようにも見える。

世界のエネルギーを握る20%という数字

ホルムズ海峡を通過する原油は世界輸送量の約20%、液化天然ガスは約30%。サウジアラビア、UAE、クウェート、イラク、イランの輸出の大部分がここを経由する。封鎖が1週間続けば、アジアの製油所在庫は底をつき始め、欧州のスポット価格は連動して跳ね上がる。

2019年にホルムズ海峡でのタンカー攻撃が相次いだとき、原油価格は1日で約15%急騰した。あのときは「攻撃」だった。今回もし封鎖という形をとれば、衝撃の桁が変わる可能性がある。イラン経済崩壊が進む中でも、この「カード」だけはテヘランが手放していないという現実がある。

同時に、イランがホルムズの「開放」を求めてきたという表現は逆説的でもある。封鎖するのはイラン自身の選択肢であるはずなのに、米国に「開放を認めてほしい」と求める構図――これはむしろ、封鎖という選択肢をイランがすでに使えない状況に追い込まれているとも読めた。

この先どうなる

トランプ政権が「最大圧力」路線を再始動させた場合、イランには核合意への復帰か、さらなる孤立かの二択が迫られる。イラン経済崩壊が加速する中で、革命防衛隊が強硬路線を維持できる期間にも限りがある。ホルムズ海峡封鎖というカードは、切れば自国経済にも跳ね返る「諸刃」でもあるからだ。今後数週間、米イランの非公式接触の有無と、原油先物市場の動きが最初の答えを出すことになりそうだ。