日本GDP 2024年第1四半期の速報値が出た瞬間、市場は静止した。年率換算マイナス2.0%。アナリスト予測のマイナス1.5%をさらに下回るその数字は、日本銀行が描いてきたシナリオを根本から揺さぶるものだった。

マイナス金利解除から2カ月で、何が崩れたか

3月に17年ぶりのマイナス金利解除を決めた日銀は、その時点で「緩やかな賃上げと消費回復」を前提に次の利上げを視野に入れていた。ところが蓋を開ければ、個人消費は冷え込み、輸出も勢いを失った。

背景にあるのは実質賃金のマイナス継続だ。円安が輸入物価を押し上げ、名目賃金の伸びが物価上昇に追いつかない状態が続いている。財布が閉じれば消費は動かない。シンプルな話だけど、これが今の日本の現実らしい。

「日本経済は第1四半期に予想を上回る規模で縮小した。日本銀行が超緩和的な金融政策の正常化を目指す中、さらなる利上げ計画が複雑化している」(Reuters、2024年5月16日)

日銀が利上げを急げば景気をさらに冷やすリスクがある。かといって動かなければ、円安圧力は抜けない。どちらに転んでもコストが伴う、そんな局面に入ってきた。

円安が「輸出の追い風」にならない理由

円安なのに輸出が伸びない——ここが引っかかったポイントだ。かつては円が下がれば輸出企業が潤うという図式があった。ただ今は、製造拠点の海外移転が進んでいて、国内生産ベースの輸出は以前ほど為替感応度が高くない。

むしろ円安の恩恵は限定的な一方で、輸入コスト増というダメージだけが家計に直撃する構造になっている。日銀利上げの見通しが遠のけば、この円安・輸入高・実質賃金マイナスのループは当面続く可能性が高い。

さらに国際的な波紋も出てきた。日銀が動けないとなれば、ドル高・円安の構図が再び強まる。アジア通貨全体への波及、新興国の対外債務負担増という連鎖は、Reutersも「日本一国の問題ではない」と報じていた。

この先どうなる

5月以降のデータ次第で、日銀の次の一手は大きく変わる。消費や賃金の回復が数字に出てくれば、年後半の利上げ余地は残る。ただ今の流れが続くなら、2024年中の追加利上げは見送りシナリオが現実味を帯びる。

市場が注目するのは、6月以降の実質賃金統計と日銀の次回会合における総裁発言だ。円安に業を煮やした政府・財務省の口先介入も再び増える可能性があり、為替市場のボラティリティは高止まりしそう。日本GDP 2024年第1四半期のこの数字が、夏以降の金融政策を決定づける「基準点」になるかもしれない。