新興国株式市場が、開戦前の高値をついに抜いた。牽引役は二つ——AIへの投資熱と、ホルムズ海峡の再開に向けた交渉への期待感。どちらか一方でも大きなニュースなのに、それが同じ週に重なったのは、相場にとって想定外の追い風だったかもしれない。
世界の原油輸送量20%が通る「あの海峡」で何が起きているか
ホルムズ海峡は、世界の原油輸送量のおよそ20%が通過する要衝だ。封鎖が続くあいだ、エネルギーコストの高騰に苦しんでいたのはとりわけ新興国だった。インフラ整備に回せるはずの予算が燃料費に消え、輸出競争力も削られていく。
そこにホルムズ海峡封鎖交渉の妥結期待が浮上した。「再開されれば」という条件付きの話ではあるが、市場はその可能性を織り込みにいった。期待だけで動くのが相場の常とはいえ、今回の動きはちょっと速すぎる気がした。
「新興市場株は月曜日、人工知能への再注目とホルムズ海峡再開に向けた合意への期待を背景に上昇した」(Bloomberg、2026年4月27日)
もう一つの力がAI投資マネーだ。AIチップ需要の急拡大が、台湾・韓国など半導体依存度の高い市場を直撃している——いい意味で。エヌビディア向けの受託製造をこなすTSMCが位置する台湾株、そしてHBMメモリで存在感を増すSKハイニックスを抱える韓国株は、AI特需の恩恵を受けやすい構造にある。
対中関税の「一部緩和示唆」が点火剤になった
タイミングがさらに絶妙だった。トランプ政権が対中関税の一部緩和を示唆した直後、アジア株を中心に資金流入が一気に加速している。中国本土株だけでなく、中国向け輸出で稼ぐ東南アジア各国の市場にも波及した格好だ。
三つの材料——AI・ホルムズ・関税緩和——が重なったのだから、上昇するなという方が無理だったかもしれない。ただ、どれか一つでもシナリオが狂えば、戻しもそれなりに速そうだという点は頭に入れておきたいところ。
この先どうなる
ホルムズ海峡封鎖交渉が正式合意に至れば、エネルギーコスト低下→新興国の財政余裕拡大→株への資金再配分というルートが動き出す可能性がある。AI投資マネーについては、米国での設備投資サイクルが続く限り、半導体依存度の高い市場への恩恵も続きそうだ。一方で、対中関税緩和はまだ「示唆」の段階。正式発表が遅れれば、今回の上昇分の一部が剥落するシナリオも十分ありうる。三つの好材料が同時に本物かどうか、確認できるのはもう少し先になりそうだ。