カナダ政府系ファンドの創設が正式に発表された——それだけ聞けば、ノルウェーや中東産油国の巨大ファンドを想像するかもしれない。だが、規模の話をしたいわけじゃない。GDPの約75%をアメリカとの貿易に依存してきた国が、公式に「アメリカから自立する」と宣言した。その一点が、異例だった。

カーニーが動かした「75%」という数字

マーク・カーニー首相が打ち出したこのファンド、投資先として想定されているのは国内インフラ、エネルギー転換、戦略産業の3本柱らしい。要するに「外に頼らなくても回る体制をつくる」ための原資だ。

背景にあるのは、トランプ政権による関税攻勢と経済的な圧力の継続。カナダは長年、地理的にも経済的にもアメリカと一体化してきた。その蜜月関係に、政府がはっきりとくさびを打ち込んだかたちになる。

「マーク・カーニー首相が発表した政府系ファンドは、ノルウェーや中東など他の産油国のものよりはるかに規模が小さくなる見通しだ。」(The New York Times)

規模は小さい。でも、それを差し引いても「やる」と決めた事実の重さは変わらない。似たような構想を持ちながら動けなかった国は、カナダ以外にもいくつもある。

「対米依存」を公言して動いた国は、ほぼ前例がない

対米経済依存の問題は、カナダ国内では長年タブーに近い話題でもあった。アメリカとの関係を悪化させるリスクを取る政治家は少なかったし、選挙でそれを言える空気でもなかった。カーニーが今のタイミングで動いたのは、トランプ政権の圧力がむしろ「口実」になったという見方もできる。

マーク・カーニーといえば、元カナダ銀行総裁、元イングランド銀行総裁という経歴の持ち主。金融の論理で動く人物が「国家ファンドで自立」という政治的なカードを切ったのは、やっぱり引っかかるところがある。単純な対米反発ではなく、もっと長いスパンで描いている絵があるんじゃないかと感じた。

この先どうなる

今後の焦点は二つ。ファンドの規模と運用方針が具体的にどう固まるか、そしてアメリカ側がどう反応するかだ。カナダが「自立」を進めれば進めるほど、米加関係には摩擦が生まれやすくなる。カーニーにとってはファンドを育てる前に、外交コストをどう吸収するかが先に来る試練かもしれない。小さくてもファンドが動き出せば、他国の対米依存脱却の動きに火をつける可能性もある。静かに、でも確実に地図が変わり始めている。