カナダ王立造幣局が「倫理的に調達した」と太鼓判を押して市場に流通させていた金の、その川上を辿ると――麻薬カルテルが支配するコロンビアの鉱山に行き着いた。ニューヨーク・タイムズが4月下旬に報じた追跡調査の結論がそれだ。G7の一員として金融透明性を掲げるカナダの国家機関が、結果的にカルテルの収益洗浄を助けていたという話で、これはただのスキャンダルにとどまらない規模感がある。

「合法の紙切れ」一枚で血塗られた金属がクリーン認証を得るまで

コロンビアでは違法採掘がGDP換算で年間数十億ドル規模に膨らんでいる。麻薬カルテルにとって金は、現金よりはるかに追跡が難しい資産だ。採掘現場を押さえ、採掘した金に合法鉱山の書類を貼り付けるだけで、コロンビア国内の流通段階でいったんクリーンな商品に変身する。

その「洗浄済み」の金塊が精錬業者を経由し、国際市場へ出る。最終的な買い手がどれほど厳格な調達基準を設けていても、川上の書類が偽造されていれば見抜く手段はほぼない。カナダ王立造幣局のケースで問題なのは、まさにここだ。仕組みとして「だまされやすい」状態に制度が置かれていた、ということになる。

「私たちが辿り着いたのは、麻薬カルテルが支配するコロンビアの鉱山だった。」――ニューヨーク・タイムズ

コロンビアの違法採掘はマネーロンダリング金の代表的な発生源として以前から指摘されてきた。だが今回の報道が違うのは、疑惑の終着点がカナダという「信頼の担保」として機能してきた国の造幣局だったという点だ。

カナダ造幣局が「出口」になっていたとしたら、国際制裁体制はどう機能する

G7各国が対カルテル制裁や資金追跡に取り組む枠組みは、基本的に「クリーンな取引者が入口を守る」という前提で成り立っている。カナダ王立造幣局のような機関がその入口を守る側のはずだった。それが崩れていたとすれば、体制の前提条件ごと問い直す話になってくる。

カナダ政府と造幣局は現時点で詳細な反論を出していない。ただ、調達プロセスの見直しに言及する姿勢は示しているらしい。国際的な批判がどこまで高まるかは、今後の調査進展次第といったところだ。

この先どうなる

焦点は三つある。一つ目は、カナダ当局が内部調査を本格化させるかどうか。二つ目は、同様の調達ルートを持つ他国の精錬業者や造幣機関への波及。三つ目が、コロンビア政府との外交上の折衝だ。コロンビアは違法採掘の摘発を国際社会から求められる立場に改めて置かれることになる。マネーロンダリング金の流通を防ぐための書類認証制度そのものを強化しない限り、供給ルートを変えても同じ問題は別の国で再現される――そういう話でもある。金が光り輝いている間は、追う側は常に一歩遅れがちだ。