イラン直接攻撃——その言葉が現実のものになったのは、2024年4月13日深夜のことだった。300発を超えるドローンとミサイルがイランの自国領土から発射され、イスラエル本土へ向かった。イランがこうした形でイスラエルを直接攻撃したのは、イスラエル建国から75年で初めてのこと。中東の「代理戦争の時代」が終わりを告げた瞬間、とも言われている。
99%撃墜でも「初めて」が持つ重さ
迎撃には米軍・ヨルダン・英国・フランスが加わり、イスラエル軍は約99%を撃墜したと発表した。数字だけ見れば「完勝」に映る。ただ、ネゲブ砂漠の軍事基地には着弾があり、少女1人が重傷を負ったことも確認されている。
ここで引っかかるのは、イランがあえて「大々的に予告してから撃った」という点だ。攻撃前にイラクやトルコ経由で複数の警告シグナルが流れ、各国は迎撃態勢を整えた上で待ち構えていた。「本気で壊滅させるつもりなら予告しない」という見方が出るのも自然で、この攻撃が軍事作戦というより政治的なメッセージだった可能性が高い。
「イランは300発以上のドローンとミサイルをイスラエルに向けて発射した。これはイランが自国領土から直接イスラエルを攻撃した史上初の事例となった。」(The Associated Press)
それでも「初めて国境を越えた」という事実は消えない。ダマスカス領事館空爆への報復という文脈であれ、今後「直接攻撃はあり得る」という前例が刻まれた。
4月1日、ダマスカスで何が起きたか
今回の直接的な引き金は、4月1日にシリア・ダマスカスのイラン領事館が空爆された事件だ。イラン革命防衛隊の上級司令官ら7人が死亡し、イランはイスラエルの犯行と断定。「必ず報復する」と宣言していた。
領事館は国際法上、本国領土と同等の扱いを受ける。つまりイランの立場からすれば「自国がすでに攻撃された」状態であり、今回の報復は「宣戦布告への応答」という論理になる。中東戦争拡大の火種は、ガザだけではなかった——というのが、今回の件を調べて改めて見えてきたことだ。
原油市場は攻撃直後に即座に反応した。ホルムズ海峡周辺での有事リスクが再評価され、エネルギー価格の先行きに不透明感が広がっている。
この先どうなる
イスラエルは報復攻撃を検討していると伝えられているが、バイデン政権は「イスラエルへの支持は鉄壁だが、反撃には同行しない」と距離を置いたとされる。ここが重要で、米国が抑制的な姿勢を維持できるかどうかが、中東戦争拡大を左右する分岐点になりそうだ。
ダマスカス領事館空爆→イランの直接攻撃→イスラエルの反撃、というエスカレーションの連鎖が続けば、これまで「影の戦争」だった構図が表舞台に出てくる。国連安保理は緊急会合を開いたが、拒否権を持つ国々が対立する構図では機能しにくい。次の48時間でイスラエルが動くかどうか、そこが当面の焦点だろう。