OPECプラス減産の維持が決まった3月31日——その数字が静かに示すのは、産油国連合がいま綱渡りを続けているという現実だ。1日あたり約220万バレルの自主減産を継続する方針で合意したとロイターが報じたが、「現状維持」という言葉の裏側には、かなりのプレッシャーがある。
サウジアラビアに80ドルが必要なわけ
サウジアラビアが財政を均衡させるには、原油価格が1バレル80ドルを超えていることが条件とされている。足元の価格水準はおおむねその付近——つまり余裕がほとんどない状態だ。少し下がれば財政赤字に転落するラインで、減産をやめて価格が崩れるリスクは取れない。だから「維持」を選んだというより、「維持しか選べなかった」という見方もできる。
もともとOPECプラスは2023年後半から段階的に自主減産を積み上げてきた。それでも原油価格は期待ほど上昇しなかった。理由のひとつが中国の需要回復が予測を大幅に下回ったこと。コロナ明けのリバウンド消費に産油国が期待しすぎていたとも言えるし、中国の経済構造自体が変わってきているという見方もある。
「OPECプラスは日曜日、現行の石油生産方針を維持することで合意した。需要の低迷と地政学的不確実性が入り交じる複雑な状況の中、減産継続を堅持する。」(Reuters、2024年3月31日)
欧米の高金利も無視できない。金利が高いと企業の投資や消費者の購買力が削られるため、エネルギー需要の上振れが起きにくい。原油価格見通しを巡っては、アナリストの間でも強気と弱気が交錯している状況で、OPEC内部でも意見の統一は簡単ではなかったと見られる。
「減産」は一枚岩じゃない——ロシアとの温度差
表向きは結束しているように見えるOPECプラスだが、ロシアの立場はサウジとは微妙にずれている。ロシアにとっての原油収入は戦費に直結しており、価格維持のために生産を抑えることへの本音の不満は根強いとされる。実際、ロシアが約束した削減量を完全に履行しているかどうかについては、以前から疑問符が付いていた。今回の合意も「全会一致」とはいえ、その実態は交渉の産物だったらしい。
さらに言えば、非OPECの産油国——アメリカ、カナダ、ブラジルなど——はこの間も増産を続けている。OPECプラスが減産で価格を下支えすると、結果的に競合国の収益を助ける構図になる。これは産油国連合が長年抱えているジレンマで、今回もその構図が続いている。
この先どうなる
次の焦点は6月に予定されるOPECプラスの会合だ。そこで自主減産の段階的解除に踏み切るかどうかが問われる。中国の需要が予想より回復していれば解除に動く余地が生まれるが、現時点では楽観視しにくい。原油価格見通しが強まれば増産に転じる選択肢も出てくるが、80ドルを割り込むリスクに対してサウジが慎重な姿勢を崩すとは考えにくい。結局のところ、次の会合まで「現状維持のまま様子を見る」という展開が続く可能性が高そうだ。サウジアラビア財政の綱渡りは、しばらく終わらない。