U.S. Mint cartel gold——この組み合わせが公式に問われた日、金価格は1トロイオンス3300ドルを超えていた。ニューヨーク・タイムズが報じた内容はシンプルだが、重い。米造幣局が供給する金コインの一部に、コロンビアの麻薬カルテルが資金洗浄目的で使った違法採掘金が混入していた可能性がある、というものだった。

偽の産地証明が「米国産」を生み出すまで

調べてみると、仕組み自体はそれほど複雑じゃない。コロンビアの非合法武装組織が支配する鉱山で採掘された金は、精製業者や仲介業者のネットワークを通じて原産地証明書を書き換えられる。書類の上では合法的な産地に変わり、米国の精製施設に持ち込まれる。そのまま造幣局のサプライチェーンに乗れば、コインに刻印されて「公式通貨」の完成だ。

金マネーロンダリングの手口としては以前から知られていたが、これほど川下まで到達していた疑惑が報じられたのは異例といっていい。コロンビア違法採掘からの金がどの精製業者を経由したか、現時点で米当局は特定を進めている段階らしい。

「貴金属価格が急騰するなか、業界の防護柵は崩壊した。」(The New York Times)

この一文が刺さるのは、価格高騰と不正の相関がはっきりしているからだ。1オンス1000ドル台の時代なら、偽造リスクに見合う利益は薄かった。3300ドルを超えた今、少量の混入でも得られる利幅は桁が違う。業界の自主的なデューデリジェンスが「割に合わない手間」になった瞬間、誰も止めなくなった——というのが取材班の見立てだ。

造幣局コインが「最終洗浄機」になる理由

ここで引っかかったのは、なぜ造幣局コインが最終的な出口として狙われるのか、という点だ。答えは流動性にある。米国の公式コインは世界中どこでも現金同然に換金できる。一度コインになれば出所を追跡するのは極めて難しくなる。銀行口座の送金記録や不動産登記と違い、物理的な金貨は匿名性を持ったまま移動できる。

金マネーロンダリングのゴールとして、これ以上都合のいい形はないかもしれない。コロンビア違法採掘で稼いだ現金が、最終的に米国政府のお墨付きを得た金貨になる——そのルートが実在するなら、問題は造幣局の調達管理だけじゃなく、サプライチェーン全体の認証制度に及ぶ。

この先どうなる

米財務省と造幣局は現在、サプライヤーへの調査を強化しているとされる。ただ、金の産地追跡技術(同位体分析など)はまだ業界標準にはなっていない。立法で義務化しようにも、精製業者のロビー活動は強く、規制の網をかけるには時間がかかりそうだ。金価格が高止まりするかぎり、不正混入のインセンティブは消えない。NYTの報道が米議会の公聴会を呼び込むかどうか——そこが次の焦点になるだろう。コインそのものは今日も流通している。