米イラン交渉が、妙な均衡に差し掛かっている。交渉テーブルは生きている。でも合意は出ない。ミサイルも飛んでいない。この「どちらでもない状態」が、実は一番ヤバいと複数のアナリストが言い始めた。
「相手が先に折れる」という賭け——双方が同じ計算をしている
ニューヨーク・タイムズが伝えたアナリストの読みは、なかなか冷たい。
「アナリストらによれば、双方はともに相手より長く耐えられると賭けている。しかし合意なき膠着状態には、深刻なリスクが潜んでいる」
つまり、米国もイランも「もうちょっと待てば向こうが動く」と同じ絵を描いている。これ、チキンレースの典型なんだが、問題は両方がそれを「合理的な計算」だと信じているところだ。消耗戦の怖さは、疲れた側が突然、予測不能な動きに出ることにある。
ホルムズ海峡、核開発、イスラエル——三つの時限装置
合意がないまま時間が流れると、じわじわ悪化する変数が三つある。
一つ目がホルムズ海峡リスク。世界の原油輸送の約20%がここを通る。イランが「封鎖」のカードをちらつかせるたびに、エネルギー市場が反応する構図は変わっていない。
二つ目が核開発の静かな前進。交渉が続いているあいだも、イランのウラン濃縮は止まっていないとされる。合意が遅れるほど、イランの核能力は事実として積み上がっていく。
三つ目がイスラエルとの連動。イスラエルはイランの核施設への単独攻撃オプションを手放していない。米国が「もうちょっと交渉を」と引き留めている構図だが、その綱が切れるタイミングは誰にも読めない。核合意膠着が長引くほど、このリスクは現実味を帯びてくる。
この先どうなる
歴史を振り返ると、戦争でも平和でもないグレーゾーンが続いた地域で、最終的に衝突が起きたのは「誰かが意図した瞬間」じゃなく「小さなミスが連鎖した瞬間」だったりする。米イラン交渉の現状がそれに近い。
次の焦点は、5月以降に予定される交渉ラウンドの行方と、イスラエルの「忍耐の期限」がいつ切れるか、この二点になりそうだ。ホルムズ海峡リスクに敏感な原油市場も、静かに次のシグナルを待っている。「砲声がない=安全」という読みは、今のところ早計と見ておいた方がいい。