出生地主義市民権が、160年ぶりに本気で揺らいでいる。火をつけたのはトランプではなく、意外にもリベラル系の世論調査グループだった。
アメリカで生まれれば自動的に市民権を得る——この原則は1868年に批准された憲法修正第14条に根拠を持つ。南北戦争後、旧奴隷の市民権を保障するために設けられた条文だ。それ以来150年以上、この解釈は「動かざる前提」として機能してきた。
民主党支持層にも広がる「当然じゃない」という空気
調べていて引っかかったのは、今回の調査の出どころだ。不法移民の親から生まれた子への自動的な市民権付与に疑問を示したのは、保守系ではなくリベラル寄りの調査機関。民主党支持層のなかにも「不法入国した親の子に、なぜ自動付与なのか」という声が一定数あることが可視化された。
トランプはすでにTruth Socialへの投稿で、この世論の変化を「追い風」と捉える姿勢を示唆している。
「トランプによる出生地主義市民権制限の動きが、意外な情報源——リベラル系の世論調査グループ——から『弾薬』を得ている。」
憲法学者の大多数は、大統領令だけで修正第14条の解釈を変えることは違憲だという立場を崩していない。ただ、世論が動き始めると話は変わってくる。司法判断は真空の中で下されるわけじゃなく、議会の空気や社会的合意も間接的に影響を与えるからだ。
トランプ移民政策が「憲法改正」へ踏み込む条件
現実的なルートを整理すると、大きく三つある。①連邦最高裁が修正第14条の解釈を狭める判断を下す、②議会が憲法修正を発議する(上下両院3分の2以上が必要)、③州議会の批准(4分の3以上)という手順だ。②と③は現状の議席分布からほぼ不可能に近い。焦点は①に絞られる。
トランプ政権はすでに出生地主義制限を盛り込んだ大統領令に署名しており、複数の連邦地裁が差し止めを命じている状態。最終的には連邦最高裁の判断待ちで、保守派6対リベラル派3の現構成が判決の行方を左右しそうだ。
この先どうなる
世論調査の結果がそのまま法解釈を変えるわけではない。ただ、「憲法修正第14条は現代の移民問題を想定して書かれたものではない」という論点が党派を超えて広がると、最高裁が判断を示す際の政治的コストは下がる。リベラル系調査グループの数字は、トランプ陣営に「国民の半数以上が反対しているわけじゃない」という根拠を与えつつある。移民政策の議論が「誰がアメリカ人か」という問いに着地する日は、思ったより近いかもしれない。