ホルムズ海峡封鎖が続いている。しかも米国とイランの「両側から同時に」という、歴史上前例のない形で。ブルームバーグが伝えたのはそれだけのことだが、数字で並べると話が変わってくる。ここを通る原油は世界供給の約20%、液化天然ガスは約30%。その流れが今、ほぼ完全に止まっている。
タンカーが動かない=製油所が原料を失う、という単純な話
海峡を通過できないタンカーは、行き場をなくしてアンカレッジに滞留し続けている。そのしわ寄せはすぐにアジアへ来た。日本、韓国、インドの製油所はすでに代替航路の確保に動いており、スポット市場の運賃は急騰し始めているらしい。
代替となるルートがないわけではない。アフリカ南端・喜望峰回りという選択肢はある。ただしそれは航行日数が2〜3週間単位で増える話で、コストと時間の両方が跳ね上がる。製油所のスケジュールは週単位で組まれているので、「迂回すればいい」では済まない部分が出てくる。
「ホルムズ海峡の通航はほぼ完全な停止状態が続いており、イランも米国も海上交通への封鎖を緩める兆候をいっさい見せていない」(Bloomberg)
両陣営から同時封鎖というのが今回の異常さで、片方が威嚇・もう片方が通行という従来のパターンとは違う。どちらが先に折れるかの消耗戦の様相を帯びてきた。
米イラン対立2026、「前例がない」が意味すること
過去にも緊張が高まった局面はあった。1980年代のタンカー戦争、2019年の相次ぐ拿捕事案。ただし米国とイランが互いに封鎖を「維持」した状態は記録にない。外交的なチャンネルが機能しているのかどうかも、今のところ表には出てきていない。
原油市場の反応も気になるところだった。封鎖長期化の懸念が広がれば、原油価格は上振れ圧力を受け続ける。一方でスポット市場の運賃急騰はすでに現実のもので、エネルギーコストの上昇は製造業から物流まで幅広く波及していくことになる。米イラン対立2026がエネルギー価格の新たな床を作る可能性が出てきた、と言ったら言い過ぎだろうか。
長期化した場合に変わるのは輸送コストだけじゃない。どの国がどの産油国と関係を結ぶかという調達先の地図ごと書き換わりうる。原油供給危機が数週間続けば、そのインフラへの投資判断にも影響が及んでくる。
この先どうなる
封鎖が解除されるとすれば、外交交渉の進展か、どちらかの軍事的な後退か。今のところどちらも見えていない。日本にとっては原油輸入の約9割が中東経由で、ホルムズ依存度は主要国の中でも高い部類に入る。代替調達の余地が限られる中、政府と民間の対応がどこまで迅速に動けるかが問われることになる。スポット運賃の急騰は序章に過ぎない可能性がある、というのが今の状況をいちばん正確に表しているかもしれない。