ネタニヤフ ガザ拡大——この四文字を、イスラエル首相が自ら口にした。APが伝えたその発言には、ハマスを「もう一つのナチスの敵」と呼ぶ言葉が含まれていた。単純な修辞に聞こえるかもしれないが、歴史的な比較には機能がある。「ナチス」という言葉を使った瞬間、交渉の余地は狭まり、殲滅が「正当な目標」として国内外に流通しやすくなる。
「ナチス比較」がはらむ法的な地雷
ハマス ナチス比較、これは初めて出た言葉ではない。ただ今回は首相が公式に「拡大」と結びつけた点が違う。国際人道法には比例原則という概念があって、軍事目標に対して過度な民間被害を与えることを禁じている。敵をナチスと定義した場合、「どこまでが過度か」という議論がぼやけやすくなる——法学者が長年指摘してきた構図がそこにある。
「イスラエルのネタニヤフ首相はガザでの戦争が拡大すると述べ、ハマスをイスラエルが打倒しなければならない『もう一つのナチスの敵』に例えた。」(The Associated Press)
現時点でガザの死者数は4万人を超えたとされる。これが拡大すれば、数字は更新され続ける。
ラファ、エジプト、そして産油国——連鎖する地図
イスラエル南部作戦がラファへ深化すれば、エジプトとの国境地帯に直接的な圧力がかかる。エジプトは以前から「ラファへの本格侵攻はキャンプ・デービッド合意の精神に反する」と警告してきた経緯があって、関係悪化は外交コストとして跳ね返ってくる。さらに湾岸産油国の多くはパレスチナ問題で国内世論に敏感で、情勢が激化するほど各国政府のポジション取りが難しくなる。停戦を求める国際社会の声が高まる中、首相は逆方向にアクセルを踏んだ格好だ。
この先どうなる
当面の焦点はラファ南部への地上作戦がどこまで踏み込むか、それと並行して停戦交渉が再起動するかどうかの綱引きになる。カタルやエジプトが仲介を続けているが、「拡大宣言」が出た今、交渉テーブルの温度は下がったとみる向きが多い。国連安保理での追加決議も動きが出る可能性はあるが、拒否権の壁は変わらない。次に動くのは首相の言葉ではなく、地上の部隊配置——そこを見ておく必要がありそうだ。