CIA メキシコ 無断作戦——その4文字が、先週末の事故報告書から浮かび上がった。チワワ州の山岳道路で車両が転落・爆発し、米国人工作員2名が死亡。ここまでなら「悲劇の事故」で終わっていたかもしれない。ところがメキシコ側の調査が進むにつれ、2人がそもそもメキシコ国内で作戦を行う資格を持っていなかったという事実が出てきた。
「旅行者」と「外交旅券」——2人が隠した身分
メキシコ安全保障省が公表した入国記録を調べたら、こうなっていた。1人は一般の「旅行者」として入国。もう1人は外交旅券を使ってはいたが、それは身分を隠す手段であり、作戦活動の認可を意味するものではない。チワワ州の薬物製造施設の摘発作戦に参加し、その帰途に事故が起きたとされている。
「いずれも国内の作戦活動に参加するための正式な認定を受けていなかった」——メキシコ安全保障省・公式声明
連邦当局への事前通知もなし。メキシコ国内法は外国エージェントが作戦活動に参加することを明確に禁じており、今回はその禁を正面から破っていたことになる。
シェインバウムが守ろうとしている「一線」とトランプの圧力
大統領シェインバウムはこれまで一貫して、外国当局者が自国領内で動くには連邦政府の事前許可が必要だという立場を崩していない。トランプ政権が麻薬カルテル対策への直接介入を繰り返し求めてきた中でも、米軍や米情報機関の単独作戦は拒み続けてきた経緯がある。チワワ州での薬物摘発作戦という文脈は、まさにその「一線」をCIAが越えた格好だ。米墨間のカウンターナルコティクス協力は長年の懸案で、今回の件は両国の信頼関係にさらなるひびを入れたとみていい。
この先どうなる
メキシコ側がここまで公式に「無許可」を断定した以上、シェインバウム政権が沈黙を選ぶ可能性は低い。外交チャンネルでの説明要求か、入国・作戦に関する新たな二国間ルールの再交渉が動き出す公算が高い。一方のトランプ政権は麻薬対策での圧力を緩める気配がなく、メキシコの主権主張と真正面からぶつかる局面が続きそうだ。次に注目すべきは、米国務省がこの調査結果にどう応答するか——その言葉の選び方で、両国関係の温度がはっきりする。