中国EV関税100%という数字が、静かに世界を揺さぶっている。ロイターが報じたバイデン政権の新方針、現行25%からの一気4倍引き上げは、単なる貿易上の駆け引きとはちょっと違う匂いがした。
BYDが動き、テスラが焦り、アメリカが壁を積んだ
ここ数年で起きたことを整理すると、構図がくっきりしてくる。BYDは2023年に世界EV販売台数でテスラを追い抜き、今や東南アジアと欧州市場を着々と侵食中。一方、テスラは値下げ競争で利益率が削られ、GMやフォードはEV投資の縮小を余儀なくされていた。
そこへ今回の措置。関税100%が実施されれば、中国製EVの対米輸出は事実上、経済合理性を失う。ただし中国メーカーはすでにメキシコや東南アジアへの生産移管を検討しているとも伝えられており、壁を積んでも迂回路が塞がれるわけじゃない。この点がちょっと引っかかった。
「事情に詳しい関係者によると、バイデン政権は中国製電気自動車への関税を25%から100%へ引き上げ、太陽電池への関税も約25%から50%へと倍以上に引き上げる方針だ」(Reuters, 2024年5月14日)
太陽電池への関税倍増も見逃せない。再生可能エネルギーの普及を掲げてきたバイデン政権が、クリーンエネルギー関連品のコストを自ら押し上げる。インフレ抑制と気候変動対策という二つの看板が、ここで正面衝突している格好だ。
選挙対策か、それとも本物の産業戦略か――答えは「両方」かもしれない
11月の大統領選を前に、バイデン陣営が「強い対中姿勢」を演出したいのは確かだろう。ラストベルトの製造業労働者票を意識すれば、関税強化は分かりやすいメッセージになる。トランプ前政権が課した対中関税をほぼ維持してきたバイデン政権が、ここでさらに踏み込むのは、支持層へのシグナルでもある。
ただ、バイデン通商政策の文脈で見ると、CHIPS法、インフレ削減法(IRA)の国内産業優遇措置と並ぶ一連の流れの中に、この関税引き上げは収まる。選挙前の一発芸というより、米中デカップリングを段階的に制度化する動きの延長線上にある。
この先どうなる
中国側の報復措置が焦点になる。農産物や航空機部品など、米国が痛みを感じやすい品目への対抗関税が来れば、貿易摩擦は次のステージへ。欧州はすでに中国EVの補助金調査を進めており、米国の動きに追随するかどうかも注目点だ。一方で、関税逃れを狙った第三国経由の生産シフトが加速すれば、政策効果が薄まる可能性もある。米中経済デカップリングの行方は、関税の「高さ」より「抜け穴の多さ」で決まるかもしれない。