米国対イラン制裁が、今度は中国企業40社以上へ直接飛び火した。米国務省が発動した今回の措置は、中国の精油所1社と海運会社を含む計40社を対象とし、イラン産原油の取引に関与したことを制裁理由に挙げている。ターゲットにされたのは、長年にわたって制裁網をすり抜けてきた「影の船団」と呼ばれる非公式の輸送ルートだった。

「影の船団」40社、一気に包囲

影の船団とは、制裁を回避するために船籍や船名を頻繁に変え、AISと呼ばれる位置発信システムをオフにしながら航行するタンカー群のこと。イランの石油輸出を陰で支えるインフラとして機能してきたとされる。

今回制裁を受けた中国の精油所は、こうした非公式ルートを経由してイラン原油を受け取っていたとみられている。中国精油所への制裁は、北京政府にとって見過ごせない踏み込みで、外交的に相当な摩擦を生む可能性がある。

「米国、イラン産原油をめぐり中国の精油所1社と海運会社40社に制裁を科した。」(AP通信)

バイデン政権末期から続いていた対イラン強硬路線を、トランプ政権がそのまま引き継いでさらに加速させた格好。中国企業への直接制裁という手段を選んだことで、単なる対イラン政策の延長ではなく、対中経済圧力のカードを同時に切ったようにも見える。

北京が「黙認できない線」を越えたか

中国はこれまで、イランとのエネルギー取引を国家戦略の一環として維持してきた。制裁下のイラン原油は、市場価格より安く調達できるという実利もある。中国精油所制裁は、その経済的旨みを直撃する。

北京側の反応次第では、報復措置や外交的な対抗手段が取られる可能性もある。イランの石油収入が細れば、中東域内での同国の影響力低下にもつながりかねない。それが中東のパワーバランスを揺さぶり、原油市場へどう波及するかは、まだ読みきれないところがある。

イラン原油密輸のルートが本当に封じられるのか、それとも影の船団がまた別の抜け道を見つけるのか——制裁の実効性を問う声もすでに出ている。

この先どうなる

最大の焦点は、中国が今回の中国精油所制裁をどう受け止め、どう動くかだろう。外交チャンネルでの反発にとどまるのか、あるいは対抗措置に踏み切るのか。トランプ政権は関税交渉でも中国との綱引きを続けており、エネルギー制裁が交渉カードとして使われる展開も否定できない。イランの石油輸出が実際にどこまで減少するか、原油価格への影響が出始めるのは数週間後になりそうだ。「影の船団」が完全に姿を消すとは考えにくいが、制裁リストが40社規模に拡大したことで、保険・金融面での締め付けが強まるのは確かだろう。