トランプ イスラマバード 会談キャンセル——その一報が飛んだのは、米代表団がパキスタンへ向かう直前だった。Truth Socialへの投稿は短く、しかし内容は重かった。「移動の時間が無駄」「指導部に激しい内輪もめ」「自分たちはすべての切り札を持っている」。この3行で、間接交渉ルートがまるごと消えた。
「電話一本かければいい」——トランプが突きつけた3つの理由
今回の会談はイランとの直接対話ではなく、パキスタンを仲介役に挟んだ間接チャンネルだった。テヘランと直接向き合わずに圧力をかけ続けるという、トランプ外交らしい設計だったわけで、その場所にあえてイスラマバードが選ばれていた経緯がある。
それをキャンセルした理由として、トランプ氏がTruth Socialで明かしたのが以下の内容だ。
「イランとの会談のためパキスタン・イスラマバードへ向かう予定だった代表団の派遣をたった今キャンセルした。移動に時間を浪費しすぎる、やるべきことが山積みだ。それに加え、彼らの『指導部』内部には激しい内輪もめと混乱がある。誰が主導権を持っているのか、彼ら自身も含め誰もわかっていない。私たちはすべての切り札を持ち、彼らは何も持っていない。話したければ、電話一本かければいいだけだ。」(Donald J. Trump / Truth Social)
注目したいのは「指導部」を意図的にクォーテーションで括っている点。最高指導者ハメネイ師、大統領ペゼシュキアン、革命防衛隊——それぞれが異なる路線を持ち、核交渉における発言権も一枚岩じゃない。トランプ側がそこを「混乱の証拠」として公の場で指摘してきたのは、交渉のテーブルを壊しながら相手の弱点も晒すという二段構えに見える。
米イラン核交渉2025——パキスタンルートが消えた意味
2025年に入ってから、米イラン核交渉は直接対話を避ける形で再始動していた。オマーンを介した接触が続く一方、今回のイスラマバードはパキスタンが新たな仲介役として動いた形だったとされる。その窓口が突然閉じられたことで、残る選択肢はオマーン経由か、あるいはトランプ氏が言う「電話一本」だけになった計算になる。
イラン指導部の内部対立という問題はずっと前から燻っていた。改革派と強硬派の間で核合意への温度差は大きく、誰かが合意に傾けば国内で足を引っ張られる構図がある。トランプ氏がその亀裂を公言した形になったことで、イラン側の交渉姿勢はむしろ硬化する可能性もある。
原油市場は今回のキャンセルを受けて緊張感を高めているが、価格が急騰するかどうかは「次の一手が何か」にかかっていて、現時点では様子見の空気が漂っている。中東地域の安全保障という観点では、交渉が止まること自体がリスクの蓄積になる。
この先どうなる
イラン側が「電話する」という選択肢を取るかどうかが最初の分岐点になる。トランプ氏は強気の立ち位置を崩していないが、過去の行動パターンを見ると、圧力をかけた後に突然対話に転じることもあった。米イラン核交渉2025の次の局面は、イスラマバードが消えた今、オマーンルートの再活性化か、あるいはトランプ氏が別の第三国を経由する新ルートを仕込んでくるかの2択に絞られてきたんじゃないかと思う。イラン指導部の内部対立が解消されない限り、どんなチャンネルを使っても交渉は前に進みにくいのが現実で、その膠着が長引くほど軍事オプションへの言及が増えていく、というサイクルを警戒する必要がある。