ウィトコフ イラン交渉の舞台として、まさかパキスタンが選ばれるとは——ニューヨーク・タイムズが報じた訪問計画を追うと、米・イランの水面下の動きが少しずつ見えてくる。トランプ政権の中東特使スティーブ・ウィトコフと、大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナー。この二人がそろってイスラマバードへ飛ぶ見通しだというのだ。

なぜパキスタンが「仲介の回廊」になったのか

地図を見れば、すぐわかる。パキスタンはイランと約900キロの陸続きの国境を持ち、歴史的に両国はエネルギーパイプラインの協議や非公式チャンネルで繋がってきた。米・イランが直接テーブルにつくのが政治的に難しい今、第三国を介するのは外交の常套手段ではある。ただ今回がらしいのは、クシュナーという非公式キャラクターが同行する点だ。政府の正式ラインではなく、トランプ家の人脈を使った非公式接触——そういう読みができる。

「スティーブ・ウィトコフとジャレッド・クシュナーは、トランプ政権がイランとの緊張緩和のための外交チャネルを模索する中、イランに関連した協議のためパキスタンを訪問する見通しだ」(ニューヨーク・タイムズ)

クシュナー パキスタン訪問のタイミングは偶然ではない。ホルムズ海峡では近週、米軍とイラン革命防衛隊の間で緊張が続いており、世界の原油供給の約2割が通過するこの海域が封鎖リスクにさらされている。原油価格の上下は燃料代から航空運賃まで波及する。だからこそ、どんな形でも「対話のパイプ」を繋ぎ直す動機がワシントンにはある。

「停戦交渉の布石」か「時間稼ぎ」か——ホルムズ海峡が答えを出す

ここが引っかかった。仮にこの訪問が成功したとして、イラン側に何を渡せるのか。経済制裁の部分緩和なのか、それとも核合意の再枠組みなのか。ウィトコフは中東停戦の交渉役としてすでに動いてきた実績があるが、イランは話が別だ。最高指導者ハメネイ師が「アメリカとの直接交渉はしない」と繰り返してきた文脈がある。パキスタンを挟んでも、それが変わるかどうかはまだわからない。ホルムズ海峡の停戦に向けた実質的な前進なのか、国内向けの「外交努力をしている」というポーズなのか——その判断は、交渉後の動きを見るしかない。

この先どうなる

NYTが「近く実施される見通し」と報じた以上、訪問の有無は数日以内に明らかになるはずだ。パキスタン側がどこまで仲介に踏み込むかも焦点になる。イムラン・カーン元首相逮捕後の政治的混乱を抱える同国が、米・イランの火中の栗を拾いに行く動機があるのか——そこも見ておきたいポイントだ。交渉が実質化すれば原油市場は一時的に落ち着く可能性がある。逆に決裂すれば、ホルムズ海峡の緊張が一段上がるシナリオも排除できない。静かに動き始めた外交チャンネルの結末、もうしばらく目が離せない。