ホルムズ海峡での発砲が確認された。イラン軍が航行中の船舶3隻に対して銃撃を加えたとAP通信が伝えたのは、米軍による海峡封鎖が続く最中のことだった。外交ルートはすでに機能していない、と見たほうがいいかもしれない。

世界の石油20%が通る「咽喉」で何が起きたか

ホルムズ海峡は幅わずか約50キロ。しかしここを通過する原油・LNGは世界輸送量の約20%に相当する。サウジアラビア、UAE、クウェート、イラクからの積み出しがほぼすべてここを経由する。日本や韓国が輸入する原油の相当部分も、この海峡を抜けてくる。

イランによる船舶攻撃はこれが初めてではない。2019年には日本のタンカーを含む複数の船舶が機雷や無人機で被害を受けた経緯がある。ただ今回は文脈が違う——米軍封鎖という「先手」に対する、実弾を使った応手という構図になっている。

「外交交渉が行き詰まる中、イランがホルムズ海峡で3隻の船舶に発砲した」——AP通信

イラン側がどの旗の船舶を狙ったかはまだ不明な部分が多い。ただ海上保険市場はすでに反応しており、ホルムズ通過船向けの戦争リスク保険料は急騰しているとの観測が出ている。保険コストが上がれば、タンカーの運航コストに跳ね返り、最終的には輸入国の電気代や燃料価格に乗ってくる。

米軍封鎖×イラン発砲——「チキンレース」の現在地

米軍がホルムズ海峡の封鎖に踏み切った背景には、イランの核開発をめぐる交渉決裂がある。外交の圧力弁として封鎖を選んだ形だが、イランはそれに「撃つ」という返答を選んだ。

問題はここからのエスカレーションラインがどこに引かれているか、双方の間で共有されていない可能性があること。米軍は護衛艦を展開しているとされ、イラン軍の次の一手によっては直接の交戦状態に入るシナリオも排除できない。

東アジアへの影響も見ておく必要がある。日本の原油輸入の約9割は中東依存で、ホルムズ経由が大半を占める。海峡が事実上の「戦場」に近づけば、エネルギー調達コストの上昇は不可避だろう。

この先どうなる

外交交渉が停滞し、現場で実弾が飛んでいる今、次のシナリオとして有力なのは三つ。①どちらかが一歩引く形での非公式停戦、②第三国(カタールやオマーン)の仲介による交渉再開、③さらなる実力行使によるエスカレーション——だが今の空気感では①②よりも③に傾きつつあるように見える。原油先物市場と海上保険の動きが、外交よりも正直に「次」を織り込んでいくはずだ。しばらく目が離せない。