アマル・カリル、43歳。彼女が最後に逃げ込んだ建物に、2発目の爆弾が落ちた。レバノン南部タイリ村で起きたこの空爆は、「たまたまそこにいたから」では片付けられない経緯をたどっていた。

二段階攻撃――最初の爆発で逃げた先が、また狙われた

水曜日の午後、レバノン紙アル・アフバールの記者アマル・カリルとフリーランス写真家ザイナブ・ファラジは車で現地取材中だった。前を走っていた車両がイスラエル軍の空爆で直撃され、男性2人が死亡。2人は咄嗟に近くの建物へ避難した。

ところがその直後、同じ建物に再び空爆が炸裂。アマル・カリルは命を落とし、ファラジは重傷を負った。さらにレバノン当局が告発したのは、救助に向かった救急車まで「意図的に」標的にされたという点だった。赤十字の標章を掲げた車両が、である。

IDF(イスラエル国防軍)は「ジャーナリストを標的にしていない」「救助チームのアクセスを妨害していない」と否定した。だが、逃げた先を再び攻撃するという二段階の攻撃パターンを偶然だと説明するのは、なかなか難しい。

レバノン首相「確立されたアプローチによる戦争犯罪」――国際法廷へ

レバノン首相ナワフ・サラムは今回の件を「確立されたアプローチ」と表現した。一度限りの誤爆ではなく、繰り返されるパターンとして捉えているわけだ。

「ジャーナリストを標的にし、救援チームのアクセスを妨害し、さらに救援チームが到着した後も再び彼らの場所を攻撃することは、戦争犯罪に該当する」― ナワフ・サラム、レバノン首相(BBC News / AP)

サラム首相はアマル・カリルの家族に哀悼を表明したうえで、「国際法廷に提訴する」と宣言した。実際にどの法廷にどう持ち込むかはまだ見えないが、発言そのものは国際社会への圧力として機能しうる。

報道の自由を記録するNGO・CPJの統計では、2023年10月以降、ガザとレバノンで死亡したジャーナリストはすでに100人を超えている。レバノン記者殺害のケースが新たにその数字に加わった形だ。取材者が標的になり続けるなら、現地の「見える化」そのものが消えていく。

この先どうなる

レバノン側の国際提訴が実際に動くとすれば、ICCやUNの人権機関への申し立てが現実的な選択肢になる。ただ、既存の手続きは長期化しやすく、政治的拒否権が働く場面も多い。短期的に何かが変わるとは考えにくいのが正直なところだ。一方、CPJやRSFといった国際報道機関は記録を積み上げており、将来的な訴追に向けた証拠の蓄積という意味では無意味ではない。イスラエル空爆戦争犯罪をめぐる国際的な議論は、今後さらに熱を帯びていくだろう。アマル・カリルという名前が、その議論の焦点のひとつになりそうだ。