ウクライナ軍事支援の「3億ドル」という数字を聞いて、多いと思うか少ないと思うか。ロイターが複数の米当局者の証言をもとに報じたところによれば、バイデン政権はこの規模の新たな軍事支援パッケージを発表する準備を進めていた。タイミングは2024年3月。議会での追加予算承認が事実上凍結している最中のことだった。

議会を迂回した「3億ドル」の調達ルート

今回の支援で注目されるのは資金の出所だ。通常、大規模な対外軍事支援には議会の承認が必要になる。ところがバイデン政権が選んだのは、大統領権限の範囲内で執行できる既存の国防権限を活用するという抜け道に近い手法だった。

含まれる内容は弾薬と防空システム関連機材が中心とされている。東部戦線での消耗戦が続くウクライナ軍にとって、弾薬不足は深刻な問題として繰り返し報告されてきた経緯がある。即戦力として現場に届く構成を意識したらしい。

「米国はウクライナ向けに3億ドル相当の新たな軍事支援パッケージを発表する予定であると、米当局者2人がロイターに語った。」(Reuters, 2024年3月12日)

ただ、手放しで歓迎できる話でもない。3億ドルという数字は、政権が議会に要求していた支援総額の数十分の一の規模に過ぎないとされる。現場レベルで言えば、消耗品の補充にはなるが、戦局を動かすほどのボリュームではないという評価が支配的だった。

バイデン政権の「防衛権限活用」が前例になるリスク

議会の承認なしに大統領権限で軍事支援を積み上げるやり方は、今後の政権運営でも議論の的になりそうだ。共和党の一部には対ウクライナ支援そのものへの懐疑論が根強く、追加予算の審議が進まない背景にはその政治力学がある。

バイデン政権が既存の国防権限を絞り出すように使うのは、この膠着状態への苦肉の対応とも読める。ウクライナ側としては支援を受け取れること自体はプラスだが、長期的な供給の保証がない状況が続くのは作戦計画に影響する。東部戦線の消耗戦では、弾薬の安定供給こそが防衛ラインを維持するカギだからだ。

この先どうなる

議会の予算審議が動かない限り、バイデン政権が切れるカードは限られてくる。既存権限の活用には上限があり、3億ドル規模の支援を何度も繰り返せるわけではないとみられている。結局のところ、焦点は議会補正予算の行方に戻ってくる。2024年の大統領選サイクルが本格化する中で、ウクライナ支援が国内政治の人質に取られる構図は変わっていない。戦場の時計が止まってくれるわけでもなく、この綱渡りがいつまで続くのかという問いだけが残る。