中国製造業がイラン戦争の直撃を受けている——トランプ関税を5%成長で乗り切ったはずの中国経済が、今度はホルムズ海峡発の新たな圧力に削られ始めた。BBCが広東省・仏山の工場街を現地取材すると、見えてきたのは「時給300円」の路地裏だった。
仏山の路地裏、時給300円という現実
木陰でタバコを吸いながら張り紙を眺める男たち。掲示には赤い文字でこう書かれていた——スマートフォンの組み立て、18〜20元(約300〜330円)。40代以上の出稼ぎ労働者が大半で、「また新しい不安が来た」という表情だったとBBCは伝えている。
「私たちの生活が分かる人間なんていない。働いても働いても、生活がない。助けてくれ」——仏山の路上、匿名の労働者(BBC取材)
外国人記者にこう訴えること自体、珍しく、そしてリスクを伴う行為だ。それでも声を上げたところに、現場の切迫感がにじんでいた。広東省の雇用悪化はすでにトランプ関税前から進行していたが、中東情勢が追い打ちをかけた格好になっている。
北京が「停戦」を叫ぶ、外交より切実な理由
中国はトランプ関税ショックのさなかでも輸出を伸ばし、約5%のGDP成長を達成した。数字だけ見ればたしかに底力を示した。ただその間も、地方の出稼ぎ労働者の不満はくすぶり続けていたらしい。
そこにホルムズ海峡の緊張が重なった。工場への受注は細り、エネルギーコストは上昇し、広東省の雇用悪化に拍車がかかっている。ホルムズ・サプライチェーンの混乱は、中国製造業にとってじわじわ効いてくるタイプの痛みだ。派手な数字には出にくいが、路地裏の張り紙には如実に現れる。
北京が異例の速さで停戦を求め始めた背景には、こうした足元の事情があるんじゃないか——BBCの取材はそこを示唆している。「外交的立場」という説明だけでは、少し物足りない気がしてくる。
この先どうなる
ホルムズ海峡の緊張が長引けば、広東省の雇用悪化はさらに深刻になっていく可能性が高い。中国製造業は自動化・高付加価値化にシフト中だが、40代以上の出稼ぎ労働者がその恩恵を受けるには時間がかかる。北京が停戦働きかけを強めるか、あるいは国内の雇用安定策を積み増すか——どちらに動くにしても、仏山の路地裏の張り紙が変わるまでには、まだ時間がかかりそうだ。