ジョン・フェランが海軍長官を即日付けで離任した。ペンタゴンが発表したのは現地時間5月28日。理由は一切示されていない。後任代行にはハング・カオ海軍次官が就く。静かな発表文の裏に、米軍首脳部の深い亀裂が透けて見える。

艦艇建造をめぐる「亀裂」が引き金か

今回の更迭の背景として、米メディアが挙げているのが艦艇建造をめぐる内部対立だ。確認情報ではないとされつつも、複数の報道が同じ方向を指している。

フェランは民間出身の文官で、軍歴はない。海軍長官の職務は政策立案、人員採用、訓練・装備の整備、そして艦船・施設の建造・修繕の監督と、予算管理が中心。いわば海軍の「経営者」ポジションだ。そのポストで何かが噛み合わなかったらしい。

「即日付けで離任となる」――国防総省報道官ショーン・パーネルがSNSへの投稿で述べた。感謝の言葉は添えられていたが、理由の説明は一行もなかった。

パーネルは「フェラン長官の貢献に感謝し、今後の活躍を祈念する」と型通りのコメントを出したが、これが事実上の幕引き宣言だった。

ヘグセスが切り捨てた「十数名超」のリスト

フェランの更迭は、孤立した出来事じゃない。ヘグセス国防長官はここ数か月、高級将校を次々と交代させてきた。陸軍参謀総長のランディ・ジョージを退任させ、海軍作戦部長、空軍副参謀総長も含めて十数名以上が職を失った。陸軍将官のデイビッド・ホドニとウィリアム・グリーン少将も最近、役職を解かれている。

これだけの人数が短期間に入れ替わると、単なる「人事の刷新」という説明では追いつかなくなってくる。軍の指揮系統をどう作り直したいのか、ヘグセスの意図が見えそうで見えない。

そして今、舞台はホルムズ海峡だ。米国によるホルムズ海峡封鎖が続いており、現場の海軍は有事対応の最前線に立っている。そのタイミングで海軍長官ポストが空白になった。「代行」体制での対応を迫られる形になった。

この先どうなる

後任代行のハング・カオがどこまでの権限を持って動けるか、まずそこが焦点になる。正式な長官への昇格なのか、あくまでも暫定なのか、ペンタゴンはまだ明らかにしていない。

もう一つ気になるのが、粛清の連鎖がどこで止まるかだ。十数名を超えた時点で、軍内部の「空気」は変わっているはずで、残った将官たちがどう動くかは読めない。ホルムズ情勢が緊張を続ける以上、指揮官の顔ぶれが安定しないことのリスクは、数字で測れない種類のものだろう。フェランの名前はすぐに忘れられるかもしれないが、この人事が何を意味したかは、もう少し後になってから見えてくる気がする。