ドル基軸通貨の地位が、戦争によって延命されているらしい。2026年4月23日、Bloombergが報じたSWIFTのデータが示したのは、イランを巡る中東の軍事衝突が続く中、世界貿易におけるドル建て決済の比率が過去最高水準に達したという事実だった。脱ドル化を声高に掲げていた新興国の動きが、地政学リスクの現実の前に止まっている。
SWIFT最新データが映した「危機のドル買い」
ホルムズ海峡の緊張が高まり、エネルギー市場が揺れるたびに、各国の銀行が向かった先はドル建て決済だった。調べたらそこには単純な論理があって、リスクが高まるほど「決済が通る通貨」に集まる。SWIFTの銀行間外為市場のデータは、その動きをそのまま数字に焼き付けたかたちだ。
「中東での継続的な紛争が、銀行間外国為替市場の活動指標の一つによれば、世界貿易における米ドルの支配的な地位を一段と強固なものにしていると報じられた。」(Bloomberg、2026年4月23日)
SWIFT決済データが示すドル依存の高まりは、単なる短期的な逃避行動では片付けられない。制裁網と軍事的な混乱が重なるとき、代替決済システムの信頼性は試されるより先に敬遠される。ここが引っかかったところで、脱ドル化の議論は「技術的には可能」でも「有事には使えない」という壁に毎回ぶつかっている。
人民元・円の多極化構想、また止まった
BRICSを中心に積み上げてきた脱ドル化の動き、ロシアと中国の二国間通貨スワップ、そして人民元建て原油取引の拡大。どれも着実に進んでいたはずだった。ところが今回の中東情勢の激化で、各国の実務レベルでは安全を優先してドルに戻る動きが広がっているとみられる。円を軸にした多極化議論に至っては、日本自身の金融政策の不安定さも重なって、構想というよりも願望に近い状態が続いている。皮肉なのは、アメリカが主導した制裁と軍事関与が、ドルを揺さぶるどころかむしろ需要を作り出している点じゃないか、という見方が市場関係者の間でも静かに広がっていること。
この先どうなる
中東の停戦合意が近づくか、ホルムズ海峡の緊張が一定程度解消されれば、短期的なドル回帰の圧力は和らぐ可能性がある。ただ、SWIFTのデータが示したトレンドが「有事には必ずドルへ」という市場の行動パターンを再確認させた以上、脱ドル化陣営が次に打ち出す一手は相当に難しい。人民元の国際化にせよ、デジタル通貨の国際決済網にせよ、信頼の積み上げには平時の長い時間が必要で、戦時にはその信頼があっという間に剥がれる。次の有事が来る前に何かを変えられるか、それだけが問われている。