トランプ海軍撃沈命令——その4文字が、5月の連休明けに世界のニュースデスクを駆け巡った。SNSのトゥルース・ソーシャルへの投稿という形で発せられた言葉は、「小型船であっても」という一節を含んでいた。これが本当に実効性のある命令なら、ホルムズ海峡を航行するすべての船が射程に入ることになる。
ホルムズ海峡の交戦規定、何が変わるのか
世界の石油輸送量の約20%が通る海峡で、米海軍はこれまで「差し迫った脅威への対応」を原則としてきた。小型高速艇による嫌がらせや機雷敷設への対処はその範囲内だったが、「いかなる船も撃沈せよ」という言葉が交戦規定として適用されれば話は違ってくる。
引っかかったのが「小型船」という部分だ。ホルムズ海峡には毎日、漁船、連絡船、密輸業者が入り混じって航行している。国籍も目的も一見では判別しにくい。そこに無差別に近い発砲規則が適用されたとしたら、誰が最初の誤爆を起こすかの問題になってしまう。
「私はアメリカ海軍に対し、たとえ小型船であっても、いかなる船も撃沈するよう命令した。」——Donald J. Trump(Truth Social)
米海軍は大統領の指揮下にあるが、実際の交戦規定は国防総省が策定し、法務レビューを経て適用される。SNS投稿がそのプロセスを飛び越えて現場指揮官に届くわけではない——少なくとも制度上は。だから「命令」なのか「威嚇の言葉」なのか、今のところ外側からは判断がつかないらしい。
米海軍小型船への発砲命令、同盟国は聞いていたか
もう一つ気になったのが、事前通告の問題だ。ホルムズ海峡には日本を含む多くの国のタンカーが頻繁に通航している。もし米海軍が実際に交戦規定を変更していたなら、同盟国への通知が先だろう——しかし今回、日本政府や欧州各国からそれを確認した形跡は見当たらない。
国際法の観点からも話は複雑だ。公海上での船舶攻撃は、宣戦布告か国連安保理決議なしには原則として認められない。ホルムズ海峡はイランと国際社会の間で法的地位をめぐる争いが続く海域でもある。「小型船も撃沈」が現実に機能する法的根拠を、いまのところ誰も示せていない状態だ。
この先どうなる
今後の焦点は3つ。①米国防総省が実際に交戦規定を変更したかどうかを公式に説明するか、②イランがこの発言をどう受け止め、海峡での行動を変えるか、③日本・欧州の同盟国がタンカー防衛の枠組み見直しを急ぐかどうか。ホルムズ海峡の緊張指数は、次の48時間が分水嶺になりそうだ。投稿一つでここまで世界が動くのが、トランプ外交の特徴といえばそれまでだけれど。