ゼレンスキー防空が、今まさに岐路に立たされている。イランをめぐる軍事衝突が長引くほど、ウクライナが西側からパトリオットや迎撃ミサイルを調達できる見通しは暗くなる——そうゼレンスキー大統領が明言した。ロシアは週200発を超えるミサイルとドローンをウクライナの都市に撃ち込み続けており、防空の穴は即座に民間人の命に直結する話なのだが、世界の目は中東に向いている。

パトリオットは世界に何基あるのか

パトリオットシステムは米国を中心に生産されているが、製造ラインの拡張には時間がかかる。ウクライナ支援が本格化した2022年以降、欧米各国は自国の備蓄を切り崩す形で供与を続けてきた経緯がある。そこへイラン紛争が加わると、湾岸諸国や米軍が優先的に防空資産を抑えにかかる可能性が高い。パトリオット供給不足は数字の問題というより、誰が「最初の客」になれるかという政治的な優先順位の問題だったりする。

「イラン紛争の長期化はウクライナのミサイル防衛確保リスクを高める可能性がある」——ゼレンスキー大統領(Reuters, 2025年4月23日)

ゼレンスキーのこの発言、単なる危機感の吐露じゃなくて、援助疲れを見せ始めた同盟国への計算された圧力でもある。「中東を優先すれば、ウクライナの空が抜ける」というメッセージを西側首脳に向けて打ち出した格好だ。

二つの戦争を同時に支えられるか、という問い

ここで引っかかるのが、西側の防衛産業の実態だ。ウクライナ侵攻以降、砲弾や迎撃ミサイルの在庫不足はNATO各国で慢性化している。イラン紛争が本格化し、イスラエルや米軍の消費量が跳ね上がれば、生産ラインの優先度が中東へシフトするのは避けがたい。イラン紛争ウクライナ影響という構図は、遠い話ではなく、すでに調達の現場で始まっているとも言われている。
一方、ロシアは北朝鮮産の弾薬をフル活用しており、消耗戦の持続力という点で西側連合との非対称がじわじわと広がってきた印象もある。

この先どうなる

イラン情勢が数週間以内に収束すれば、防空資産の供給不足は一時的な波として吸収できるかもしれない。ただ、紛争が泥沼化すれば話は別で、NATO加盟国が自国防衛用の備蓄を守るために対ウクライナ供与を絞るシナリオが現実味を帯びてくる。ゼレンスキーが今この時期に声を上げたのは、まだ交渉の余地があるうちに西側の目を引き戻そうとしているからだろう。パトリオット供給不足が決定的になる前に、どこかが動くかどうか——そこが今後の焦点になりそうだ。