ECB政策金利が4%のまま動かなかった。ユーロ圏が誕生してから25年、これほど高い借入コストが続いたことは一度もない。そして今回、ラガルド総裁は会見でほとんど何も言わなかった――それ自体がメッセージだった。

ラガルドが「沈黙」を選んだ理由

欧州中央銀行は2024年1月25日、理事会で政策金利の据え置きを全会一致で決定した。市場はある程度予想していたが、注目は金利の水準よりもラガルド総裁の言葉の「量」にあった。

利下げ転換の時期について問われた総裁は、明確な回答を避け続けた。出てきたのは「データ次第」「2%への持続的回帰が必要」という繰り返し。これを「ハト派への転換サイン」と読んだ市場参加者もいたが、少なくとも公式スタンスに変化はない。

「欧州中央銀行は予想通り政策金利を過去最高水準に据え置いた。インフレ率が持続的に2%目標へ回帰するとの証拠が十分に集まるまで、ユーロ圏25年の歴史上最も引き締まった水準の借入コストを維持する」(Reuters, 2024年1月25日)

調べていて引っかかったのは、「証拠が十分に集まるまで」という表現のあいまいさだ。何をもって「十分」とするのか、ECBは定義していない。その不透明さが、企業の設備投資判断や家計の住宅ローン選択を宙ぶらりんにしている。

ドイツが止まると、ユーロ圏全体が止まる

数字を並べると見えてくるものがある。ユーロ圏のGDP成長率は2023年第3四半期にゼロを記録した。ドイツに限れば、通年でマイナス成長に転落したとの推計が出ている。かつて「欧州の機関車」と呼ばれた国が、エンジンを止めかけているのが現状だ。

製造業の受注は減り、エネルギーコストの高止まりが工場の採算を圧迫している。そこへ高金利が重なれば、企業が設備投資を先送りするのは当然の選択。雇用、融資、住宅価格――あらゆるものがフランクフルトの金利決定と連動して動いている。

ユーロ圏インフレ自体は2023年秋以降に鈍化傾向を示しているが、サービス業のインフレは根強く残っている。ECBが「まだ足りない」と判断する根拠はここにあって、それは数字としては理解できる。ただ、コストを払っているのは中小企業の経営者や変動金利の住宅ローンを抱える家族だ、という側面は見落とせない。

この先どうなる

市場が現在織り込んでいる最初の利下げは2024年4月〜6月ごろ。ただしECBは「春の利下げ」を否定しており、実際には夏以降にずれ込む可能性が高いとみられている。

ラガルド総裁が態度を軟化させる条件はシンプルで、賃金上昇圧力の鈍化とコアインフレの連続的な低下だ。2月・3月のユーロ圏インフレ統計と、3月のECB理事会が次の節目になる。

一方でリスクは対称ではない。利下げが遅すぎれば景気後退が深まり、早すぎればインフレが再燃する。どちらに転んでも批判は免れない。ラガルドが「沈黙」を守り続けるのは、それだけ選択肢が狭まっているからかもしれない。