革命防衛隊による船舶拿捕が、またホルムズ海峡付近で起きた。今回は2隻同時。国営メディアが伝えたその一報は、エネルギー市場に静かな緊張を走らせた。

なぜ今、2隻同時なのか

ホルムズ海峡は幅わずか約33キロ。世界の原油輸送量の約20%がここを通る。革命防衛隊がこの海域で船を止めるのは今回が初めてじゃない。2019年から断続的に繰り返されてきたパターンだ。ただ、タイミングが引っかかった。米国とイランの核交渉が断続的に続くなか、あえて2隻を同時に拿捕する示威行為には、「交渉テーブルで値上がりさせる」という意図が透けて見える。

「革命防衛隊はホルムズ海峡付近で貨物船2隻を拿捕したと国営メディアが報じた。米国とイランはこの戦略的水路の支配権を巡って争っている。」(The New York Times)

米軍はすでにオマーン湾に艦艇を展開していた。それでも拿捕は止まらなかった。これは圧力の応酬が一段上がったことを意味する。

ホルムズ封鎖リスクが原油価格を揺さぶる

封鎖が現実になれば、欧州・アジア向けの原油供給は即座に滞る。サウジアラビア・UAE・クウェート・イラクの輸出ルートが一本に絞られるからだ。代替ルートとして知られるサウジのパイプライン「IPSA」は最大300万バレル/日の処理能力があるが、全体の需要を賄うには程遠い。原油価格が急騰した場合、ガソリン・物流・食料コストへの波及は数週間で現れる。市場はすでにそのシナリオを織り込み始めているとみられる。

米イラン対立のエスカレーションという観点では、今回の拿捕が「偶発的な軍事衝突」を引き起こすトリガーになりうる点が最も警戒されている。海峡付近での艦艇同士の距離が縮まれば、誤認による発砲は排除できない。

この先どうなる

焦点は2つ。拿捕された2隻の船籍と積み荷の詳細が明らかになること、そして米国がどのレベルで対応するかだ。外交ルートで決着がつけば、短期的な市場の動揺は収まるだろう。ただ、革命防衛隊が交渉材料として船を手放す前例を作ってしまえば、次の拿捕はさらに大きなカードを切ってくる可能性が高い。ホルムズ海峡封鎖リスクが「絵空事」ではなくなる日が、じわじわ近づいている。