ルフトハンザのフライト削減、その規模が2万便に達した。引き金を引いたのは中東情勢だったが、ここまで早く欧州の空が「縮む」とは、航空業界でさえ予測できていなかったらしい。
燃料価格が2倍——欧州の空を直撃した50%の急所
ジェット燃料価格高騰の根っこにあるのは、湾岸からの供給ルートの遮断だ。欧州が輸入するジェット燃料の約50%は中東湾岸からで、その大半がホルムズ海峡を通って運ばれてくる。米・イスラエルとイランの武力衝突が始まって以来、イランがこの海峡を事実上閉鎖した結果、燃料価格はほぼ倍になった。
なかでも見落とせないのがクウェートのアル・ザウル製油所。ここ1か所だけで欧州向けジェット燃料の約10%を担っていたという。供給チェーンのどこか1点が詰まるだけで、こんなに早く価格が跳ね上がるのかと、改めて調べて驚かされた。
「米・イスラエルとイランの戦争が始まって以来、ジェット燃料価格は2倍に跳ね上がった。この紛争が中東全域での生産・輸送を滞らせているためだ。」(BBC News)
国際エネルギー機関(IEA)は先週、欧州は数週間以内にジェット燃料が枯渇する恐れがあると警告を出した。英国政府や各航空会社は「現時点で供給の乱れは見られない」と打ち消しているが、IEAがここまで踏み込んだ言葉を使うのはそうそうない。
ルフトハンザだけじゃない——KLM・デルタも静かに退いた夏
ルフトハンザは今回の削減について「欧州域内ネットワークを縮小するが、長距離路線へのアクセスは維持する」と説明している。削減によって節約されるジェット燃料は約4万メトリックトンと試算された。採算が取れない短距離便を切り捨て、長距離の稼ぎ頭を守る——そういう選択だったとみていい。
KLMとデルタも一部路線を一時削減。他社はコスト増をそのまま運賃に転嫁し始めている。アナリストたちは「紛争が続く限り、値上げとフライト削減はさらに拡大する」と口をそろえる。夏の旅行シーズン直前にこの流れが来たのは、タイミングとして最悪に近い。
この先どうなる
ホルムズ海峡封鎖が解除されなければ、欧州の航空各社は短距離路線のさらなる縮小を余儀なくされるとみられる。運賃も「もうひと上げ」がありそうで、特に今夏の欧州内移動は割高になる公算が高い。IEAの「数週間で枯渇」警告が現実になるかどうかが、次の分岐点だ。代替調達ルートの確保が間に合わなければ、2万便どころか次の削減波が来る可能性も否定できない。中東の火種は、チケット価格という形でじわじわと家計に届いてくる。
