シャーマン将軍の焦土戦略という言葉が、2025年のイラン情勢に重なって語られ始めた。南北戦争でウィリアム・シャーマン将軍が実行したのは、敵の兵力ではなく「戦争を続ける能力そのもの」を壊滅させる戦略だった。フォックスニュースのオピニオンコラムが問いかけたのは、トランプ政権がその発想をイランに適用するかどうか、つまり軍事拠点だけでなく石油施設・電力網・経済インフラまで標的にする選択肢を本当に取り得るか、という点だった。
「軍事拠点」ではなく「経済の息の根」を止める論理
通常の軍事作戦と、シャーマン式のアプローチの違いはそこにある。前者は戦力を削ぐ。後者は相手が戦い続けるための土台ごと潰しにいく。コラムが指摘するのは、トランプ政権内でこの後者の選択肢が検討テーブルに乗っているかもしれないという話で、単なる比喩として持ち出された名前ではないらしい。
「トランプ大統領はイランとの戦争において『シャーマン将軍式』の徹底的な攻撃に踏み切るのか?」(Fox News Opinion)
もしイランの石油施設が標的になれば、話は一気に世界市場の話になる。ホルムズ海峡を通過する原油は世界供給の約20%。ここが機能不全に陥れば、欧州の電力価格、アジアのコンテナ船のコスト、新興国の外貨準備まで同時に動き出す。トランプ イラン全面攻撃のシナリオが現実になれば、マーケットが最初に反応するのはおそらく先物市場で、外交の議論より数時間早く値段が動くだろう。
ホルムズ海峡が「原油の蛇口」である以上、選択肢は狭い
ここで引っかかるのは、全面破壊戦略を取った場合のイラン側の返し手だ。イランが最もコストをかけずに反撃できるのは、ホルムズ海峡の通行妨害。機雷敷設だけで原油供給に大きな揺らぎが生じる。つまりアメリカがエスカレーションを選ぶと、ホルムズ海峡 原油供給のリスクプレミアムが一気に跳ね上がり、その痛みはアメリカより同盟国(欧州・日本・韓国)に先に届くという構図になりやすい。攻める側が最も有利に見えて、実は地理が反撃コストを下げているのがイランの立場でもある。
コラムが「これは軍事作戦の話ではなく、世界経済の設計図を書き換える可能性のある決断だ」と踏み込んだのは、そういう意味で的確な表現だったと思う。爆撃の煙が晴れる前に、原油のチャートが先に答えを出しているかもしれない。
この先どうなる
現時点でトランプ政権が「シャーマン作戦」に相当する計画を公式に認めた事実はない。ただ、フォックスニュースのオピニオン面でこの論点が問われたこと自体、政権周辺での議論の温度を示している可能性はある。核合意の交渉期限、イスラエルの動向、イランの濃縮ウラン備蓄量の推移、この三つが今後の分岐点になりそうだ。全面攻撃シナリオが回避されても、ホルムズ海峡を巡る緊張が静かに続く限り、原油価格には断続的な上振れ圧力がかかり続けるだろう。「作戦名がつくほど議論が具体化している」という事実だけでも、マーケット参加者は無視できないはずだ。