ホルムズ海峡 英仏構想が、水面下でひっそりと葬られた。英国とフランスが共同で練り上げ、欧州をイラン和平交渉の正式プレーヤーとして押し込むはずだった青写真は、ワシントンとテヘランの二者協議の前に影も形もなくなったらしい。ニューヨーク・タイムズが報じたこの経緯、調べれば調べるほど「欧州外交の限界」を映す鏡のようで引っかかった。

マクロンが動いた、でも誰も振り向かなかった

世界の原油輸送量の約20パーセントが通過するホルムズ海峡。ここを舞台に、英仏は「欧州にも席を」と構想を練っていた。背景にあるのは、2015年のイラン核合意(JCPOA)でEUが担った調停役の記憶だ。あのとき欧州は仲介者として機能した。今回も同じ役割を、という計算はあったはずで。

ところが現実は違った。マクロン イラン外交をめぐる報道を追うと、フランス大統領の積極姿勢とは裏腹に、テヘランはワシントンとの直接チャンネルにこだわり続けた。トランプ政権との実務交渉を優先するイランにとって、欧州は「第三者」でしかなかったわけだ。

「ホルムズ海峡の安全確保に向けた英仏の構想は、ヨーロッパに役割を与えるはずだった。しかし依然として、テヘランとワシントンが主導権を握っている。」(The New York Times)

この一文が全てを要約している気がした。「役割を与えるはずだった」という過去形の重さ。

欧州が蚊帳の外に置かれた代償、NATOへの波紋

欧州 中東和平交渉における発言権の喪失は、単なる外交的メンツの問題じゃない。エネルギー安全保障の話でもある。ホルムズ海峡が封鎖されれば、直撃を受けるのは欧州の精製所だ。リスクを抱えながら交渉テーブルに座れない、というのは相当な構造的弱さだった。

NATOの文脈で見ると、さらにきつい。米欧の役割分担が問われているいま、「欧州は言われたことをやる側」という図式が定着しつつある。マクロンが以前から訴えてきた「欧州戦略自律」の掛け声が、ホルムズでまた空振りした格好になった。英国もブレグジット後の独自外交を模索していただけに、今回の挫折は静かに痛い。

この先どうなる

米・イラン交渉の行方次第で、欧州が再び呼び込まれる余地はゼロではない。核合意の検証・監視フェーズになれば、IAEA連携を担う欧州の出番は出てくる可能性がある。ただ、それは「主役」ではなく「監査役」の座席だ。マクロン イラン外交が本当に復権するには、欧州単独で何かを動かせる実績が要る。今のところ、その材料は見当たらない。ホルムズの海峡を風が吹き抜けるように、英仏構想も通り過ぎていった——そんな印象が残った。