原油需要崩壊の本番は、まだ始まってすらいないかもしれない。世界最大級の石油トレーダーたちが異口同音にそう警告しているとブルームバーグが伝えた。中東での戦闘そのものよりも、その「余波」が市場を静かに、しかし確実に締め上げているという話だった。

ホルムズ海峡エネルギーリスク——爆発より怖い「見えない絞首」

注目されているのは直接的な供給途絶ではなく、タンカーの迂回ルート強制・保険料の急騰・荷受け拒否の連鎖だ。ホルムズ海峡周辺の緊張が長引くにつれ、物流コストは静かに積み上がっていく。爆発音はしない。けれど、エネルギーの動脈は確かに細くなっている。

「戦争による需要打撃の最悪期は、まだ来ていない」——Bloomberg、石油大手トレーダーの警告より

トレーダーたちが特に懸念しているのはアジア向けの輸送ルートだという。中国・インドへの原油輸送コストが跳ね上がれば、製造業の原価が押し上げられる。それが消費財の価格に転嫁される頃、世界はすでにインフレの第二波の中にいる——そんな流れが静かに準備されつつある、ということらしい。

中東戦争インフレ波及、アジアが最初に食らう理由

アジア市場が脆弱な理由は単純で、中東依存度が欧米より高いからだ。中国・インド合わせて世界の原油需要の3割以上を占める。ここへの輸送コストが2割、3割と上がれば、製造コスト全体への影響は無視できなくなる。「物価は落ち着いてきた」という安堵感が、気づけば幻だったという展開もあり得る。

足元の原油価格は中東緊張のわりに落ち着いて見える。それを「市場が冷静」と読むか、「まだ織り込んでいない」と読むかで、これからの判断が分かれてくる。トレーダーたちの見立ては後者に近い。

この先どうなる

当面の焦点はホルムズ海峡エネルギーリスクがどこまで長期化するかだ。停戦交渉が進めば輸送コストも落ち着くシナリオもある。一方で紛争が長引けば、保険料・迂回コストの高止まりが定着し、アジア向け原油調達の構造そのものが変わりかねない。原油需要崩壊という言葉が実感として広がるのは、おそらく価格ではなく「モノの値段」が再び動き始めた瞬間だろう。その日が来る前に、市場がどう動くかを注視しておきたい。