Iran nuclear dealが、かつてそれを壊した男の手で作り直されようとしている。トランプ前大統領が自身のSNSに投稿したのはわずか一文だったが、その波紋は原油市場から中東の安全保障まで一気に広がった。
「JCPOA超え」と言い切ったトランプ、2018年と何が違うのか
2015年のJCPOAはオバマ政権下で成立した核合意で、イランのウラン濃縮能力を制限する代わりに経済制裁を段階的に解除する枠組みだった。ところが2018年、トランプはこれを「最悪の合意」と切り捨て、一方的に離脱。その後イランは濃縮活動を加速させ、現在は兵器級に近い60%超の濃縮度に達しているとされる。
その張本人が今回、こう投稿した。
「我々がイランと結ぼうとしているこの合意は、JCPOAよりもはるかに優れたものになる」
「はるかに優れた」が何を意味するのか、ここが一番引っかかる部分だ。JCPOAは濃縮を制限したが「禁止」ではなかった。トランプ陣営が求めているのは完全禁止とも、段階的な上限強化とも言われているが、交渉の詳細は一切明かされていない。
濃縮「完全禁止」か「段階制限」か——原油価格が動く分岐点
合意の中身次第で、市場の反応は真逆になりうる。イランへの制裁が大幅に解除されれば、日量数百万バレル規模の原油が国際市場に戻ってくる可能性がある。OPECプラスが生産調整で支えてきた原油価格への下押し圧力は相当なものになるだろう。
一方、イスラエルはJCPOAの段階でも「イランの核開発を容認するな」と強硬に反発してきた経緯がある。今回の交渉がどこまで核活動を縛れるかによって、イスラエルの軍事的行動の可能性も変わってくる。バズっているイスラエルによるテヘラン空爆の話題とも、実は地続きの問題だ。
Trump Iran negotiationsの行方を読む上でもう一つ気になるのが、イラン国内の政治情勢だ。最高指導者ハメネイ師は過去にも「交渉の成果は裏切られた」という認識を持っており、国内の強硬派を抑えながら合意に踏み切るハードルは低くない。
この先どうなる
今後の焦点は三つ。ウラン濃縮の扱い(完全禁止か上限設定か)、制裁解除のスコープ(石油輸出の全面解禁か段階的か)、そしてイスラエルとサウジアラビアがどう反応するか、だ。JCPOAの教訓として残るのは、合意の文言より「誰が履行を保証するか」が全てだったこと。今回も同じ問いが突きつけられる。トランプが「歴史的」と呼ぶ合意の実態は、交渉が表に出てくるまでわからない——それが今の正直なところじゃないか。