フーシ派への米英爆撃が、また一夜で実行された。標的はイエメン国内に点在する武装拠点群。紅海を通過する世界の商業輸送の約12%を人質に取り続けてきた組織に対し、米英両軍が再び軍事的圧力をかけたわけだが――過去の爆撃のたびに思い知らされてきた疑問がある。「これ、効いているのか?」という話だ。

紅海封鎖で輸送コストが最大3倍になるカラクリ

フーシ派が紅海を封鎖するたびに、欧州向けの海上物流はアフリカ最南端の喜望峰を迂回するルートを余儀なくされる。スエズ運河経由と比べると、航行距離は約9000キロ増える計算らしい。燃料費、時間コスト、保険料の上昇が重なって、輸送コストは最大3倍に膨らんだケースも報告されていた。

その負担は運送業者だけでは吸収しきれない。最終的には小売価格に転嫁され、消費者物価を押し上げる。欧州のインフレが「なかなか収まらない」と言われていた時期に、紅海問題が一因として挙げられていたのは偶然じゃなかった。

「米国と英国は、紅海における商船への脅威能力を低下させることを目的として、イラン支援下のフーシ派に対しイエメン国内の拠点への共同空爆を実施した。」(AP通信)

今回の作戦はその延長線上にある。ただ、同じような爆撃は過去にも繰り返されてきた。フーシ派は毎回、数日から数週間のうちに攻撃を再開してきた実績がある。

爆撃を重ねても止まらないフーシ派——イランとの関係が鍵

フーシ派が「しぶとい」理由のひとつは、イランからの支援ルートが切れていない点にあると見られている。ドローンやミサイルの部品、資金、情報――それらの補給網を空爆だけで断ち切るのは難しい、というのが多くの軍事アナリストの見方だった。

さらに、フーシ派は自分たちの攻撃を「パレスチナ連帯」として位置づけている。この文脈がある限り、国内での支持基盤が爆撃で弱まるどころか、むしろ強化されるリスクすらある。米英にとって都合の悪い話だが、現実はそういうことらしい。

イエメン軍事作戦が長期化すれば、地域の緊張はさらに複雑な様相を帯びる。紅海の商船封鎖問題は、単純な「軍事力 対 武装組織」の図式では語れなくなっている。

この先どうなる

今回の米英共同爆撃が一時的な打撃になったとしても、フーシ派が即座に矛を収める可能性は低いとみられている。焦点はイランの出方だ。米国がイランへの外交的・経済的圧力を同時に強められるかどうかが、紅海情勢の落としどころに直結する。物流コストへの影響という観点では、今後数週間の商船ルートの選択データが一つの指標になるだろう。紅海が「使える海」に戻るかどうか——それが世界の消費者の財布に直結している、というのは大げさじゃない話だ。