ホルムズ海峡封鎖の情報が流れると同時に、月曜のアジア市場で原油が5%近く跳ね上がった。引き金はトランプ大統領の一言——「イラン船籍の貨物船を拿捕した」。それだけで、ブレント原油は4.74%高の1バレル94.66ドル、WTIは5.6%高の88.55ドルまで一気に駆け上がった。

イラン船拿捕で原油が吹き上がった「5分間」

ことの発端は2月28日にさかのぼる。米国とイスラエルがイランを攻撃し、イランはホルムズ海峡を通過する商業船を標的にすると宣言。世界の石油とLNGの約20%が行き交うこの水路が実質的に閉ざされた格好になった。

イランはいったん一時的な再開通を行ったものの、「米国による封鎖が停戦合意を違反している」として革命防衛隊(IRGC)が再度の閉鎖を宣言。日曜日の時点でホルムズ海峡は依然として閉まったまま、というのが現場の実情らしい。

そこへトランプのイラン船拿捕発言が加わり、市場は瞬時に反応した。

「原油市場は、地上の実態ではなく、米国とイランのソーシャルメディア投稿の揺れに反応して乱高下している。原油の流れが急速に回復するには依然として厳しい状況にある」——サウル・カヴォニック(MST Marquee、BBCへのコメント)

要するに、現実の船が動いているわけでも、交渉が前進しているわけでもない。ポストが出るたびに先物が上下しているというのが、アナリストの見立てだ。

交渉は始まるのか——パキスタン経由の綱渡り

トランプは月曜日、パキスタンで交渉の代表団が動くと発言し、副大統領のJDバンスが率いる米国代表団がイスラマバードに向かった。ところがイランの国営メディアは「現時点では交渉への参加計画はない」と伝えており、イラン側の公式な立場は依然として曖昧なまま。

イラン船拿捕という強硬手段と交渉参加の呼びかけが同時進行する——これはディール交渉の常套手段でもあるが、市場にとっては材料が増えるほど振れ幅も大きくなるという悪循環だ。

エネルギーコストの上昇は輸送費から食料価格まで連鎖する。利上げを停止する方向を模索していた欧州中央銀行にとっても、想定外の変数が増えることになる。

この先どうなる

最大の焦点はパキスタンでの交渉にイランが実際に姿を見せるかどうか。現時点でイラン側は「参加しない」と言いつつ、公式に否定もしていない。この曖昧さ自体が交渉カードになっている可能性もある。

仮にホルムズ海峡封鎖が数週間単位で続けば、原油100ドル超えのシナリオも市場では語られ始めている。一方、カヴォニックが指摘するように「SNS投稿が動かす相場」である以上、一つのツイートで急落する可能性も同程度に存在する。原油価格急騰がこのまま定着するのか、単なるノイズで終わるのか——その答えは、意外にも次のポスト通知で変わるかもしれない。