イラン停戦期限まで、交渉の時計が静かに、しかし確実に刻み続けている。トランプ大統領が「合意なければ停戦延長は極めて困難」と明言したのは、単なる外交的な牽制じゃなかった——それはほぼ最後通牒に近い言葉だった。そしてその余波は、中東にとどまらずアジアの物価棚、欧州の燃料タンク、新興国の食卓まで届きうる話らしい。

ホルムズ海峡20%——数字が示すリスクの重さ

ここで引っかかったのが、ホルムズ海峡リスクの具体的な数字だ。世界の原油海上輸送量のうち約20%がこの海峡を通過している。停戦が崩れてこの航路に緊張が走れば、エネルギー市場への影響は即日、かつ広範囲に出る可能性がある。

2019年のホルムズ海峡タンカー攻撃事件のとき、原油価格は一時15%近く跳ね上がった。あのときは「事件」で収まったが、今回は国家間の停戦そのものが賭けのテーブルに載っている。規模が違う。

日本にとっても他人事ではなく、原油輸入の約9割が中東依存。円安が続く局面でエネルギー価格が再上昇すれば、物価への波及は避けられないだろう。

「合意なければ停戦延長は極めて困難」——Donald J. Trump

この一言を額面通りに受け取るか、交渉戦術と読むか。外交アナリストの間でも見方は割れているようだ。ただ、トランプ核交渉の過去のパターンを見ると、「最大限の圧力」を演じながらも土壇場で握手する、というシナリオを繰り返してきた経緯がある。

今週末の核交渉——「歴史的合意」を演出したいトランプの計算

今週末に予定されていたイランとの核交渉の再開が、事実上の最終ラウンドになりつつあるとの見方が広がっている。トランプ政権にとって、この交渉を「自分が成し遂げた歴史的成果」として打ち出せれば、国内政治的にも大きなカードになる。

一方のイラン側は、経済制裁の緩和と引き換えにどこまで核開発を制限できるかというラインで激しく綱引きしている状況だ。最高指導者ハメネイ師の判断が最終的なカギを握るとされており、交渉担当者が合意を持ち帰っても、上位の決裁で覆るケースがこれまでもあった。

つまり、期限という刃は双方に突きつけられている——というより、市場にも刺さっている、という見方のほうが正確かもしれない。

この先どうなる

最も楽観的なシナリオは、今週末の交渉で暫定合意が成立し、停戦が延長される流れ。原油市場はひとまず落ち着き、アジア・欧州の物価圧力も峠を越える。トランプはすぐさま「自分の外交勝利」として発信するだろう。

一方、交渉が決裂すれば、停戦崩壊→ホルムズ海峡の緊張再燃→原油価格急騰、という連鎖が視野に入る。イスラエルの軍事的動向も変数に加わるため、地域全体の安定度が一気に下がるリスクもある。

どちらに転ぶかは、今週末の数日間が教えてくれる。フォローしておいて損はない局面だと思う。