パキスタン シーア派、推定4000万人超が今、政府への怒りをあらわにしている。米・イスラエルによるイランへの攻撃でイランの最高位聖職者複数名が死亡したと報じられた直後から、主要都市で抗議デモが連鎖した。驚かされたのは、その規模よりも速度だった。
仲介役・パキスタンが抱える4000万人という火薬庫
イスラマバードはここ数週間、イランとアメリカ双方にパイプを持つ数少ない国として停戦仲介の旗を振ってきた。スンナ派が多数を占める国家でありながら、国民の約2割をシーア派が占めるという複雑な宗教地図が、その外交的なポジションを支えてきた面もある。
ところが今回、そのシーア派コミュニティが一斉に反発した。イラン仲介外交の信頼性は、国内世論を無視したまま保てるものじゃない。政府がどちらの声を優先するかを選ばされる瞬間が、着実に近づいている。
「イランと深い宗教的絆を持つパキスタンのシーア派少数派は、米・イスラエルの攻撃によるイラン高位聖職者の殺害に激怒しており、パキスタンが担う仲介役の立場を複雑化させている。」(The New York Times)
調べてみると、パキスタンのシーア派はイランの聖地カルバラーやナジャフへの巡礼を続けてきた層が多く、宗教指導者の死に対する感情的な反応は、単純な政治的抗議とは別の次元で動いていることがわかる。政府にとってこれは、外交方程式では処理しきれない変数だった。
核保有国の政局が「中東の飛び火」で揺れる異常事態
ニューヨーク・タイムズが特に強調していたのは、今回の余波が核保有国の政治的安定にまで及んでいるという点だ。パキスタンは近年、軍と司法と政治勢力の三つ巴で慢性的な不安定を抱えてきた。そこに宗教的感情が絡んだデモが加わると、政権の足元は一気に揺らぐ。
米・イスラエル攻撃と聖職者の死という報道が事実として広まっていく中で、パキスタン政府は「仲介役」と「国内シーア派への配慮」という両立不可能に近い二つの要求を同時に突きつけられているわけだ。どちらかを取れば、もう一方を失う。それが今の構図らしい。
この先どうなる
短期的には、パキスタン政府がどのトーンで声明を出すかが試金石になりそうだ。イランへの弔意を示しすぎれば米側との調整チャンネルが細り、沈黙を保てばシーア派の怒りは国内政治問題に転化する。仲介役としての立場を維持するための余白は、日に日に狭くなっている。中東の火種が飛び火した先で何が起きるか、パキスタン情勢は今後数週間が正念場になるとみられる。