クウェートが不可抗力を宣言した瞬間、日量200万バレルの原油が法的に「届けられないもの」になった。単なる遅延通知ではない。輸出契約の履行義務を免除する、正式な法的文書だ。ホルムズ海峡の封鎖が、産油国に「約束を守れない」と言わせるところまで来た。

フォース・マジュールとは何か——クウェートが選んだ「法的降伏」

不可抗力(フォース・マジュール)条項は、地震や戦争など「当事者の責任を超えた事態」が起きたとき、契約上の義務を免除するための仕組みだ。企業が使う場面はあっても、産油国が国家レベルで原油輸出契約に対して宣言するのは、異例中の異例といっていい。

調べてみると、このフォース・マジュール宣言が効いてくる相手はアジアの製油所群だ。日本、韓国、インド、中国——クウェート原油の主な買い手はアジア太平洋地域に集中している。彼らはいま、スポット市場で代替調達の算段をつけているはずだった。

Kuwait Declares Force Majeure on Oil Shipments on Hormuz Halt — Bloomberg

ブルームバーグが報じたタイトルがすべてを語っている。「ホルムズ封鎖を受けて」という部分がポイントで、封鎖が解けなければ宣言も解除されないということを意味する。

ホルムズ海峡 封鎖が世界の原油輸出を止める数字の重み

ホルムズ海峡を通過する原油は、世界の海上輸送量の約20%にあたる。クウェートの日量200万バレルはそのなかの一部だが、市場が反応するのは量よりも「宣言」の質だった。

「供給は止まらない」という楽観論は、法的文書一枚で吹き飛んだ。スポット市場は即座に動く。代替調達を急ぐ製油所が増えれば、中東以外の産油地域——北海やアメリカのWTI原油——への需要が急騰する可能性がある。クウェートだけの問題ではなく、ホルムズ海峡 封鎖が長引けばイラク、UAE、バーレーンも同様の対応を迫られる。原油輸出 停止のドミノが始まる展開もありえた。

この先どうなる

焦点はホルムズ海峡の封鎖がいつ解除されるかに絞られる。封鎖が長期化すれば、クウェートの不可抗力宣言は「最初の一件」に過ぎなかったと振り返られることになりそうだ。アジアの製油所は代替ルートや代替産地の確保を急いでいるが、ホルムズを通らずに中東原油を運ぶルートは限られている。サウジアラビアのヤンブー港を使うパイプラインルートが注目されるのは確実だが、キャパシティには限界がある。次にどこの産油国が同様の宣言を出すか——そこを見ていれば、事態の深刻度は自然と分かってくる。