ホルムズ海峡封鎖——この言葉がまた現実の選択肢として浮上した。停戦期限が切れる前夜、イランは同海峡を封鎖する可能性を改めて前面に押し出した。APが報じた。軍事的に追い詰められた国家が最後に使う「カード」がこれだとしたら、世界が固唾を飲むのも当然だろう。

世界の原油の20%が通る「喉元」で何が起きているか

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ幅わずか約50キロの水路だ。ここを通る原油は世界輸送量の約20%、液化天然ガスに至っては約30%にのぼるとされる。調べてみると、サウジアラビア・イラク・クウェート・UAEといった湾岸主要産油国の輸出の大半がこの一本道に依存しているとわかった。

封鎖が一日でも続けば、損失規模は数百億ドルに達するとも言われている。日本は輸入原油の約9割を中東に頼っており、直撃を受けるのは対岸の話ではない。欧州もアジア各国も同様で、イラン停戦期限をめぐる交渉が油断できない理由がここにある。

「停戦期限が迫る中、イランはホルムズ海峡封鎖の脅威を改めて強調した。」(AP通信、日本語訳)

引っかかったのはタイミングだ。期限「前夜」という絶妙な瞬間に警告を出すのは、偶然じゃない。交渉の席での圧力として機能させるには、相手が「まだ間に合う」と感じている瞬間が一番効く。

イランの「人質カード」——軍事的劣勢を外交圧力に換算する計算

イランはここ数週間、軍事的に厳しい局面に立たされてきた。イスラエルによる空爆の報道が続き、国内のインフラへの打撃も伝えられている。そのイランが今、原油価格とサプライチェーンを揺さぶる「ホルムズ封鎖」という一手を改めて持ち出してきた。

これは弱さの裏返しとも読める。正面から対抗できない相手には、相手だけでなく第三者も巻き込む脅しが効く。日本・欧州・中国を含む原油輸入国が「早く解決してくれ」と米国やイスラエルに圧力をかける構図——イランはそこを狙っているらしい。

ただし、実際に封鎖を実行した場合、イラン自身も輸出収入を失うし、米軍との直接衝突リスクも跳ね上がる。脅しの「言葉」と「実行」の間には、かなりの距離があるのも事実だ。

この先どうなる

停戦交渉が期限内に合意に達するか、それとも期限切れ後に局面が一段エスカレートするか——この48〜72時間が分水嶺になりそうだ。ホルムズ海峡封鎖が現実になる可能性は今のところ低いとみる専門家が多いが、原油市場はすでに神経質な動きをみせている。イラン停戦期限と原油価格の連動を、しばらく注視しておく必要があるだろう。交渉が決裂した瞬間、一番先に動くのは市場、次に動くのは各国の「エネルギー備蓄」の話になってくるんじゃないか。