イスラマバード協議——その言葉が外交筋の間で急速に広まったのは、ここ数日のことだった。複数のイラン当局者が代表団を火曜日にパキスタンへ派遣する意向を示し、同日にはヴァンス副大統領が米国交渉団を率いて現地入りするとニューヨーク・タイムズが報じた。公の場での発言にはまだずれがある。それでも両者が同じ都市に向かっているという事実は、重い。

なぜイスラマバードなのか——パキスタン仲介という読み方

調べれば調べるほど、開催地の選択に意図が透けて見えてくる。パキスタンはイスラム世界で唯一の核保有国であり、米国ともイランとも一定の外交チャンネルを持つ。ワシントンにとってはNATO外の「中立地帯」、テヘランにとっては「イスラム同盟国の仲裁」という体裁が保てる。どちらも国内に向けて「我々が譲った」とは言いにくい交渉で、この枠組みは双方に都合が良かったらしい。

「複数のイラン当局者が、代表団が火曜日にイスラマバードへ向かう意向を示した。同日、ヴァンス副大統領が米国交渉団を率いて到着する予定となっている。」(The New York Times)

ヴァンス副大統領の直接出席というのも、異例だ。通常の予備交渉に副大統領が顔を出すケースは少ない。格を上げることで「本気度」を示す演出とも読めるし、逆に言えば、それだけ時間が切迫しているということでもある。

ホルムズ封鎖が長引くほど、交渉の値段は上がる

ホルムズ海峡の緊張が続く中、エネルギー市場の不安定さは食料価格や輸送コストにも波及しつつある。海峡を通過するタンカーの動向は、日本を含むアジア各国のエネルギー調達に直結している話だ。交渉が長引けば長引くほど、経済的な損失は積み上がる。それを双方が理解しているからこそ、イスラマバードという舞台に踏み込んだ——そう見るのが自然じゃないかという声も出ている。

ただし、楽観は早い。ヴァンス副大統領とイラン側の公式発言には依然として食い違いがあり、議題の設定すら固まっていない可能性がある。「協議のための協議」に終わるリスクは排除できていない。

この先どうなる

火曜日の集結が実現すれば、まず非公式の接触から始まる展開が予想される。双方の「レッドライン」の確認と、停戦条件の大枠を探る作業が先に来るだろう。イランにとっての最低条件である制裁緩和と、米国が求める核活動の透明性確保——この二つをどう組み合わせるかが最初の関門になる。パキスタンの仲介がどこまで機能するかは未知数だが、今後数日間の動向は、中東の今後数年を左右しかねない。ヴァンス副大統領がイスラマバードを去るとき、何を手に持っているか。そこを見ておく必要がある。