イスラエル兵によるレバノンでの宗教的破壊行為が、停戦からわずか数日で世界を揺さぶった。レバノン南部のデベル村で、イスラエル軍兵士がキリスト像をハンマーで打ち砕く映像がSNSに拡散。BBCが報じたこの一件は、中東の停戦合意の「その後」を問う事態へと発展しつつある。

デベル村で何が起きたか——IDFが認めた映像の中身

現場はデベル村の民家の敷地内に立つ十字架。村に残っていた住民によれば、像はある家族の敷地の境界近くに設置されたものだったという。拡散した映像にはイスラエル軍の制服を着た兵士がハンマーを振り下ろす姿が映っており、IDF(イスラエル国防軍)はこの映像の真正性を公式に認めた。

「イスラエル軍は、SNS上で拡散した画像が本物であることを認め、この事態を『極めて深刻に受け止める』とし、当該兵士の行為は軍に求められる価値観と『完全に相容れない』と強調した。」(IDF公式声明、BBC News報道より)

ネタニヤフ首相は「衝撃を受け、深く悲しんでいる」とコメント。外相ギデオン・サールも「すべてのキリスト教徒に謝罪する」と述べた。ただ、声明が出るまでに要した時間や、謝罪の温度感については各メディアが注視している。

「以前にも同じことがあった」——神父が告発した繰り返しの問題

デベル村の司祭、ファディ・フライフェル神父はBBCの取材に対し、今回の行為を「人権宣言にも反する非文明的な行為」と強く非難した。さらに踏み込んで、「同様のことは以前にも起きていた」と述べている。これが単発の逸脱なのか、それとも現場で常態化していた行為なのか——そこがこの問題の核心になりそうだ。

IDF占領下のデベル村は、イスラエルとヒズボラの間で結ばれた米国仲介の停戦合意が11月下旬に発効した後も、数千人のイスラエル軍兵士が引き続き広範囲にわたって駐留している数少ない村のひとつ。停戦後も事実上の占領状態が続く中、今回の映像は「停戦=平和」ではないことを可視化した。

この先どうなる

IDFは「適切な措置を講じる」とし、キリスト教コミュニティと協力して像を元の場所に復元すると述べている。だが、フライフェル神父が指摘した「以前にも起きていた」という証言が事実なら、今後の調査次第で事態は個人の逸脱行為を超えた問題として浮上する可能性がある。国際社会からのIDF占領継続への批判もすでに根強く、今回の映像はその文脈に新たな火種を加えた形。停戦後のレバノン南部で何が起きているか、ウォッチが必要な局面が続きそうだ。