JDヴァンス パキスタン協議、再び——ホワイトハウスがこの事実を認めたのは、ホルムズ海峡の封鎖が長期化しつつある最中だった。世界の原油輸送量の約20%が通過するこの海峡が閉ざされたまま、ヴァンス副大統領は再びパキスタンへ飛ぶことになった。外交チャンネルが次々と消えていく中で、パキスタンというルートだけが辛うじて生き残っている格好だ。
パキスタンが「最後の回路」になった理由
なぜパキスタンなのか、というのが最初に引っかかった点だった。調べると、パキスタンはイランと900キロ超の国境を接し、核保有国でありながらイスラム世界での存在感も持つ、という特殊なポジションにある。米国とも長年の安全保障上の関係があり、どちらにも「顔が利く」数少ない国のひとつだ。
ヴァンスの訪問はこれが初回ではない。「再び」という事実は、前回の協議が決裂したわけではなく、むしろ継続中のプロセスであることを示唆している。トランプ政権が外交解決の糸をまだ手放していない、ということでもある。
「ホワイトハウス高官によると、JDヴァンス副大統領が再びパキスタンを仲介とする交渉で米国代表団を率いる。テヘランからの即時コメントはなく、ホルムズ海峡は依然として大部分が封鎖されたままだ。」(The New York Times)
テヘランが沈黙を守っているという点は気になる。即時コメントなし、というのは拒否でも受諾でもない。イラン側が何らかの条件をまだ精査している可能性もあるし、単純に時間稼ぎという見方もできる。霧の中、というのが正直なところだろう。
ホルムズが開かない限り、握手は「和平」と呼べない
複数のメディアが同じ論点を指摘している——いくら交渉が進んでも、ホルムズ海峡封鎖が解除されなければ意味をなさない、と。原油輸送の約20%が止まったままの状態では、エネルギー市場への圧力は継続する。産油国、輸入国、海運業者、いずれにとっても時間のコストは膨らむ一方だ。
米イラン交渉の歴史を振り返ると、合意と現場の乖離が繰り返されてきた経緯がある。書類の上でまとまっても、海峡が動かなければ市場は動かない。その意味で、今回の交渉の「成否」は署名の有無ではなく、船が通れるかどうかという一点に尽きる。
この先どうなる
ヴァンスがパキスタンで何を持ち帰るか、そのタイムラインは今のところ不明だ。テヘランが沈黙を破るとすれば、何らかの条件提示がある可能性が高い。その条件が米国にとって呑めるものかどうか、というところに次の焦点が移る。
ホルムズ海峡の封鎖が週単位で続けば、原油価格だけでなくサプライチェーン全体への波及も避けられなくなってくる。外交交渉と海峡の動向、この二つを同時に追わないと状況の変化を見誤るかもしれない。パキスタン発の次の一報を待ちたい。