ホルムズ海峡封鎖という最悪シナリオが、再び市場の頭をよぎり始めた。Bloombergが報じたところによれば、世界のトレーダーたちはホルムズ海峡をめぐる対立が新たな市場混乱をもたらすことに身構え、リスク回避の姿勢を急速に強めているという。外交交渉がまだ続いているにもかかわらず、だ。
世界の原油の20%が通る「地球の咽喉」、その意味
ホルムズ海峡は幅わずか約33キロメートルの水路でありながら、世界の原油供給量の約20%、そして液化天然ガスの大半が日々通過している。日本の輸入原油の約9割は中東依存。この海峡が機能を止めれば、代替ルートはほぼ存在しない。タンカーが迂回するとすれば、アフリカ南端の喜望峰を回ることになるが、輸送コストと日数の跳ね上がりは計算するまでもなく明らかだ。
インフレがようやく落ち着きかけた日本にとって、エネルギーコストの急騰は家計を再び直撃するシナリオでもある。ガソリン代、電気代、食料品の物流コスト——波及先は幅広い。
「トレーダーたちは、ホルムズ海峡をめぐる対立が再び市場に混乱をもたらすことに身構えている。」(Bloomberg / Bernadette Toh)
市場が特に嫌うのは「不確実性」だ。原油価格が大きく上がっているわけではない段階でも、ポジションをどう組むかわからない状態が続けば、トレーダーはリスクを落とすしかない。実際に封鎖が起きてからでは遅い——その読みが、いま市場を動かしている。
米イラン交渉は続いているのに、なぜ緊張は解けないのか
外交の席では米・イラン両国の交渉が続いているとされる。だが現場の海峡では、緊張の解消はいまだ見通せない状況らしい。交渉のテーブルで交わされる言葉と、タンカーの動きや軍の配置は、まったく別のリズムで動いている。
原油市場混乱への警戒が高まる背景には、イラン側が「海峡封鎖」をカードとして使う可能性を否定していない点がある。圧力をかけられたとき、その選択肢を捨てないのがイランの外交慣行でもあった。トレーダーたちはその前例を覚えている。
過去2015年前後の核合意をめぐる局面でも、ホルムズ海峡の緊張は原油先物を大きく揺さぶった。今回も同じ文法で読むべき局面、という見方が市場では広がっているようだ。
この先どうなる
米イラン交渉の進展次第では、緊張が急速に緩和するシナリオも十分あり得る。ただ、交渉が決裂した場合、あるいは現場での偶発的な衝突が起きた場合、原油市場混乱は一気に加速する可能性が高い。日本政府はすでに戦略石油備蓄の活用を念頭に置いているとみられるが、備蓄で凌げる期間には限りがある。外交の言葉がタンカーの針路を決める——そんな綱渡りが、しばらく続きそうだ。