Birthright Citizenship——米国内で生まれた子には自動的に市民権が与えられるというこの原則が、160年以上ぶりに正面から問い直されようとしている。トランプ前大統領がTruth Socialに投稿した論考のタイトルは、ほぼ宣戦布告に等しかった。「なぜ最高裁は出生地主義による市民権を廃止しなければならないのか」。
修正第14条の「1868年の壁」をトランプはどう崩すつもりか
南北戦争後の1868年に批准された修正第14条は、「米国内で生まれ、またはその管轄に属するすべての者は、米国および居住する州の市民である」と定めている。連邦最高裁は過去の判例でも一貫してこの解釈を支持してきた経緯がある。
トランプ陣営の論法はこうだ——「管轄に属する」という文言は、合法的な在留資格を持たない者の子どもには適用されない、というもの。不法滞在者や一時滞在ビザ保持者の子どもを「管轄外」と解釈すれば、Birthright Citizenshipは自動的に制限されるという読み筋らしい。法学者の間では賛否が割れており、「テキスト主義」を掲げる保守系判事にとって唯一の論点とも言われている。
「なぜ最高裁は出生地主義による市民権を廃止しなければならないのか」——Donald J. Trump, Truth Social, 2025
大統領令で出生地主義を制限しようとした第1期トランプ政権の試みは、複数の連邦地裁で差し止められた。今回はその舞台を最高裁に直接移す戦略——つまり、下級審を迂回しようという動きと見るのが自然じゃないか。
毎年28万人超が「宙に浮く」、数字で見えてくるリスク
移民政策研究機関の試算では、不法滞在者を親に持つ子どもの米国出生数は年間約28万人前後とされている。Birthright Citizenshipが廃止されれば、こうした子どもたちは出生と同時に無国籍か外国籍扱いとなり、就学・医療・将来の就労に至るまで法的根拠が消える。親が強制送還される際に「同行か置き去りか」を迫られるケースも増えることになる。
移民政策という文脈だけじゃなく、医療費・教育費・税収への波及も試算されており、自治体レベルの財政担当者まで神経を尖らせているのが現状だ。修正第14条の解釈変更は憲法改正なしに可能なのかという点も含め、法廷闘争は長期化必至とみられている。
この先どうなる
最高裁が正面からこの問いを取り上げるかどうか、まず「受理」のハードルがある。現在の最高裁は保守6対リベラル3の構成で、テキスト主義的アプローチを好む判事が多数を占めているとはいえ、160年の先例を覆す判断に踏み込むかは別の話。2026年中間選挙に向けた「移民強硬姿勢の可視化」という政治的な文脈も同時に走っている以上、この議論はしばらく熱を保ち続けるはずだ。最高裁が沈黙を貫くことも、それ自体がひとつの答えになる。