ロシア制裁免除が、また延びた。米国が5月16日まで期間を再延長し、ロシア産石油をすでに積んだ船から購入することを事実上容認した。表向きの理由はイランによるホルムズ海峡の封鎖だ。世界の石油・LNG輸送量の約20%が通過するこの海峡が止まれば、エネルギー市場は揺れる。それ自体は事実だし、米国が「代替供給の確保」を急ぎたい気持ちもわかる。ただ、キーウ側からすればそういう話じゃない。

ゼレンスキーが突きつけた数字——110隻の「影の艦隊」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、米国が免除を最初に決めた3月13日にも激しく非難していた。今回の再延長でも即座に反応した。

「ロシア産石油に支払われる1ドル1ドルが、ウクライナへの戦費になる」

さらにゼレンスキーが指摘したのが、影の艦隊の問題だ。船主を意図的に不透明にした110隻超のタンカーがすでに制裁をすり抜けているという。つまり、免除があろうとなかろうとロシアは稼いでいる部分はある。ただ、免除を公式に認めることは「制裁には抜け穴がある」とお墨付きを与えるようなもので、ゼレンスキーが怒るのも話の筋が通っている。

ワシントンの論理とキーウの体感温度

米国側の言い分はこうだ。ウクライナとロシアの停戦交渉が「加速している」段階で、エネルギー不安を和らげることが全体の安定につながる——。外交的にはわからなくもない理屈だが、毎日ミサイルと無人機が降ってくる側には、ずいぶん遠い話に聞こえるはずだ。

ホルムズ海峡の封鎖はイランとイスラエル・米国の対立が引き金だった。中東の別の紛争が飛び火するかたちで、ウクライナへの制裁網が緩む。この連鎖を「仕方ない」と受け入れるかどうかは、立場によって全然違う。欧州の同盟国も3月の時点で批判していたが、その声がどこまで今回の決定に反映されたのかは今のところはっきりしない。

この先どうなる

5月16日という期限が次のターニングポイントになる。それまでにホルムズ海峡が再開通すれば、免除の「理由」が消える。米国が再々延長に踏み切るかどうかは、その時点の停戦交渉の進み具合と、中東情勢の落ち着き具合の両方が絡んでくるだろう。ゼレンスキーにとっては、戦費の問題だけでなく「同盟はどこまで信頼できるか」という問いに変わりつつある。影の艦隊の実態調査を国際的に強化すべきという声も出てきそうで、次の一手はウクライナ側からも出てくるかもしれない。