ホルムズ海峡の「通行許可」を、テヘランが法律で永久に握ろうとしている。イラン国家安全保障・外交政策委員会のエブラヒム・アジジ委員長がBBCの取材に答えた言葉は短かった——「永遠に(Never)」。それが、ホルムズ海峡の支配権を手放す気があるかという問いへの、ほぼ全部の答えだった。
アジジ議員が明かした「法律という鎧」の中身
IRGC(イラン革命防衛隊)の元司令官でもあるアジジ氏は、今まさに議会に提出しようとしている法案の骨格をBBCに説明した。根拠は憲法第110条。環境・海上安全・国家安全保障を包括する形で、船舶の通行権限をテヘランが一手に判断し、軍が実際に執行する、という仕組みらしい。
「われわれは憲法第110条に基づく法案を議会に提出しようとしている。環境・海上安全・国家安全保障を含むもので、軍がこの法律を執行する」(エブラヒム・アジジ議員 / BBC)
外交上の「脅し」として使われてきたホルムズ封鎖カードが、今度は立法という形で制度化されようとしているわけだ。これは一時的な強硬姿勢とはちょっと違う。口頭の警告より、法律のほうがずっと撤回しにくい。
なぜ今、強硬派がここまで前に出てきたのか
背景にあるのは、イラン国内の権力構造の変化だ。イスラエルによる一連の高位幹部暗殺によって、穏健派や外交路線の担い手が相次いで消えた。残ったのはIRGCを中心とした強硬派。アジジ氏はその新秩序の中から台頭してきた人物の一人と見られている。
アジジ氏自身、ホルムズ海峡を「敵に対抗するための資産の一つ」と表現した。この言葉が興味深いのは、海峡を外交カードとしてではなく「武器」として位置付けているところ。戦時下のイランにとって、IRGC法制化は単なる国内立法ではなく、対外的な抑止力の宣言でもある。
世界の原油輸送量の約20%が通過するこの海峡が本当に「イランの法律」で管理されるようになれば、タンカーの通行ごとにテヘランの判断が介在する事態になる。日本を含むアジア各国はホルムズ経由の原油に依存度が高く、他人事では済まない話だ。
この先どうなる
法案が実際に成立するかどうかは、まだ流動的だ。ただ、アジジ氏のような強硬派が主導権を握る議会では否決のハードルも高い。仮に法制化が現実になれば、米国や湾岸諸国は「通行権の国際慣習法違反」として強く反発するはずで、外交的な摩擦はさらに拡大する可能性がある。イランとしては制裁や軍事的圧力への対抗手段を法的に整備しておきたい思惑もあるだろう。ホルムズ海峡をめぐる緊張が「一時的な危機」ではなく、長期的な地政学的火種として定着しつつある——そう見ておいたほうがよさそうだ。