ホルムズ海峡 開放——その一言で、原油相場が一日に10ドル以上吹き飛んだ。イランのアラグチー外相が声明を出したのは金曜の取引時間中。ブレント原油は98ドル台で推移していたのに、発表直後には88ドル台まで沈んだ。3月に119ドルを超えた水準と比べると、下落幅の大きさが改めてよくわかる。

3月の119ドルから88ドルへ——2月末に何が起きたか

話は2月末にさかのぼる。米国とイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始すると、イランはホルムズ海峡を事実上封鎖した。タンカーの通過はほぼ止まり、世界の石油・LNG供給量の約5分の1がここを経由することを考えると、その影響は即日で価格に跳ね返った。紛争前には70ドル以下で取引されていたブレント原油は、3月に119ドルを突破。エネルギー市場はパニックに近い状態だったらしい。

そこへアラグチー外相の声明が入った。

「停戦の残存期間中、ホルムズ海峡における全商業船舶の過は完全に開放されたことを宣言する。」
——Abbas Araghchi, Iranian Foreign Minister (via BBC)

トランプ大統領もこの声明を歓迎したと伝わっている。ただ、国際海運機関のBIMCOはまだ「検証中」の立場を崩していない。現地で実際にタンカーが動き出すまで、手放しで安心できる状況じゃないということだろう。実際、その後ブレント原油は92ドル台に戻している。市場も疑心暗鬼のまま値を拾いに行った格好だ。

株式市場が一斉に動いた日——S&P500、パリ、フランクフルト

ブレント原油急落と同じ日、株式市場では逆の動きが起きた。S&P500は1.2%上昇、パリのCAC40とフランクフルトのDAXはともに約2%高で引けた。ロンドンのFTSE100も0.7%の上昇。エネルギーコストへの警戒が薄れた分、資金が株に戻り始めた格好だ。

面白いのは、今回の動きが「戦況の変化」ではなく「外交官の一声明」によって引き起こされた点だ。アラグチー外相が何を言うか、それだけで世界中の市場が動く局面になっている。調べると、BIMCOが声明を受け取ってもすぐに「完全に開いた」とは言えないとコメントしているあたり、海運業界の慎重さが際立っている。

この先どうなる

停戦が「残存期間中」という表現にとどまっている点は気になるところ。期限が明示されていないうえ、BIMCOの検証待ちが続く限り、タンカー各社は本格的な再開を決断しにくい。原油が88ドルから92ドルに戻したのは、その不確実性を市場なりに値づけした結果だろう。

もし海峡通過の実績が積み上がり、国際海運側の「安全確認」が出れば、供給回復の期待でさらに原油は下がりうる。逆に停戦が破れた瞬間、100ドル台への再上昇は速いはず。市場は今、アラグチー外相の次の言葉を待っている状態——静かな緊張感だけが残っている。